2015年1月放送の「たまむすび」で紹介されていた、恐るべしジャズ映画!「セッション」を、観ました!町山さん曰く「鞭でしばき倒すような映画」の通り、ただのミュージカル映画では終わらない「凄み」を感じた映画でした!
あらすじはなんとなくご存知の人も多いのでは?そう、鬼教師が生徒をしごく映画です!
でも、なんとこれがチャゼル監督の実体験が元ネタとのこと!
そう見るとまた見え方がグッと変わってくると思います。では、映画『セッション』紹介していきます!
目次
映画『セッション』のあらすじ・出演者
出演者情報
J・K・シモンズ = フレッチャー教授
ポール・ライザー = アンドリューの父
メリッサ・ブノワ = アンドリューのガールフレンド
あらすじ
プロのジャズドラマーを目指し、名門音楽大学に入学したアンドリュー・ニーマンは、ある日、実力主義でハイレベルしか認めないフレッチャー教授から、彼のバンドにスカウトされる。学内トップのバンドに入れることになり、夢に近づいたことを喜ぶアンドリューだったが、完璧を求めるフレッチャーの常軌を逸したレッスンに、次第に追い詰められていく。
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映画『セッション』町山さん解説。チャゼル監督の実体験が元ネタだった!
この映画は日本では2015年6月に上映されていて、放送があった時は、まだオープンでなかったせいか、町山さんも珍しくネタバレまでは出来ませんでした。そのストレスもあってか、とにかくその熱弁ぶりが凄まじかったんですが(笑)、確かにそれくらい、激しい映画でした。
邦題は「セッション」ですが、原題は「ウィップラッシュ(Whiplash)」。
日本語で「鞭打ち」の意味だそうで、有名なジャスの名曲だそうです。
映画の中でも実際に演奏されていました。曲自体はドラムがメインの明る曲ですが、このシーンで主役のアンドリューが、何故このドラムを叩いているのかを知ると、なるほど~と、ちょっと肩をすくめます。
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若い才能を探すフレッチャー教授
その原因になるのは、J・K・シモンズ演じるフレッチャーと言う、完璧主義の教授。彼は、自分のバンドを常にハイレベルに保つために、しょっちゅう才能の芽を探しており、放課後学校で練習していた新入生アンドリューに目を付けます。
アンドリューはジャズドラマーを目指して奨学金で音楽大学へ入学。なので、本当にわき目も降らずにドラムだけを叩いている毎日です。最初はチャンスをつかんだかに見えたアンドリューに襲い掛かる、J・K・シモンズ演じるフレッチャーの怪演がかなり見もの。
ドラマーを目指していたデイミアン・チャゼル監督
町山さんによると、実は監督のディミアン・チャゼルもドラマーを目指していたらしく、その時の教師にいじめられ、この映画はその時の恨みを晴らすべく撮られたとのこと。
凄まじい監督デビュー作となりました。
映画『セッション』フレッチャー教授役J・K・シモンズあっぱれ。アカデミー助演男優賞
フレッチャー教授のアンドリューに対する「しごき」は、ほとんど「フルメタル・ジャケット」の鬼軍曹のようだと、町山さんもおっしゃっていましたが。
まあ~、とにかくありとあらゆる悪口雑言を尽くし、頬っぺたを平手打ちし、親までも罵倒し、刺激剤だといっては同じ楽器の学生を連れてきて、オーケストラの正団員にするし、そうかと思えば、テンポがずれると言って、耳元で怒鳴りながら夜中ドラムを叩かせるとか。
「しごいている」と言う表現がぴったり!
こんな教師と向き合ってたら、そりゃ、恨み節も出て来るな~と、思わず監督に同情。
そして、最後まで客に嫌悪感を残しながら、この役をやり遂げた、J・K・シモンズはあっぱれでした!
彼はこの映画でアカデミー助演男優賞に輝いています。さもありなん。
フレッチャー教授は「悪い人」なのか?
フレッチャー教授を「悪い人」と言うことは簡単ですが、実は彼は、「若い芽を踏みつぶして、それでも成長するのが本物だ」と言うことを、頑なに信じ込んでいると言う、ある意味純粋な「信念」を持っており、それで人が死のうが気が狂おうが、「俺には関係ない。何故なら、それが出来るのは俺だけだから」という、あり得ないプライドも持っていると思うんです。
それが、あの狂気になったというなら、くらいついていったアンドリューも、同じ「信念」を持っていたから血しぶきを上げた・・・。そうさせる「凄み」を、J・K・シモンズが見事にやり遂げましたよね!
私はこの役者さんをあまり知らなかったんですが、町山さん情報だと、今まではほとんどが「良い人」の役だったそうで、彼自身もきっと新しい境地を開いたんじゃないでしょうか。前回紹介した『ラ・ラ・ランド』でも、思わぬところで登場しましたね!笑
映画『セッション』最後の10分間は正にバトル!叩いて、叩いて、叩きまくる!
ネタバレを回避しつつも、町山さんがとにかく声を大にして仰っていたのは、「最後の10分間」。
このチャゼル監督、実はその次の作品「ラ・ラ・ランド」でも、最後の10分間が最高の山場でしたが、そういう意味では、ミュージカル映画の定石をちゃんとご存知。しかも、「セッション」の最後の10分間は、台詞が全くなく、正に「音」のバトル。
町山さんに敬意を表して、全貌は語りませんが、最後の最後に、邦題を「セッション」とした意味も理解できたように思いました。私は「セッション」の方が、圧倒的に好きです。是非、ご覧ください。
出血は本物!吹き替えなしにドラムを叩いたアンドリュー役マイルズ・テラー
ところで、本編でも何度となく、アンドリューのスティックを握る手から出血して、ドラムを血に染めるシーンが出てきますが、これは全部本物だそうです。
アンドリュー役のマイルズ・テラーが吹き替えなしにドラムを叩いており、激した結果の血しぶき。叩いて、叩いて、叩きまくった10分間!劇場で観てたら、スタンディングオベーションしたかもしれません。確かにこのラストシーンは圧巻でした!
映画『セッション』鬼教師がチャゼル監督をアカデミー監督にさせたのか?
フレッチャー教授の名言に「りっぱになりたい人間にとってダメな言葉は「グッジョブ」だ」と言うセリフがあります。
この言葉は、彼にとっては「正義」でしょう。でも、受け取る側にとっては、必ずしも「正義」となるとは限りませんよね。
町山さんは「ペーパー・チェイス」と言う、ハーバード大学法学部の教授と学生たちのバトルを描いた映画を紹介していましたが、同じことだと思いました。
「大学」という特別な枠の中で、絶対的な王様である「教師」を超えるには、「学生」は人生の長さも経験も、圧倒的に負けています。けれども、「がむしゃら」と言う滅茶苦茶なエネルギーは若者だけの特権。
チャゼル監督の反骨精神
チャゼル監督が、自分を潰した?鬼教師への恨み節で、こんな凄まじい映画を創ってデビューしたことも、この映画が「音楽は戦いじゃない」と批判されて、「音楽は楽しい」をアカデミー賞で証明した、「ラ・ラ・ランド」を撮ったことも、「グッジョブ」と言われなかったから成しえたことだったのかも。
そう考えると、フレッチャー教授は確かに優秀な教師だったと言えるでしょう。チャゼル監督がどんな道を歩んでいくのか、本当に楽しみになってきました。
映画『セッション』闘志を失いかけた人に観て欲しい!映画を見た後はファイティング・ポーズになる!
「人間は、戦いがあれば、戦う。是非、ロッキーやゴジラが好きな人、落ち込んでるとか、やる気がない人に観て欲しい。映画館を出てきたら、ファイティングポーズを取ってるから」って、町山さんが仰ってました。私もそう思います。
でも、「戦いが好き」と言うことではなく、ロッキーやゴジラでさえも、「戦わざるを得ない理由」があったから、ファイティングポーズを取ったと思うんです。その理由こそが、「正義」なんだと思うんです。
「矜持(きょうじ)」という言葉があります。「自分の能力を信じてプライドを護ること。」その矜持を持っている人に、この映画は、是非とも観て欲しい逸品です!
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※情報変更はご容赦ください。
デイミアン・チャゼル監督作品のレビュー記事
画像出典:IMDb “Whiplash”
前川クニコ
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