『それでも夜は明ける』の感想。リアリティ溢れる凄まじい奴隷体験記・・・。

今回は、「アメリカ流れ者」で町山智浩さんが2013年11月5日に紹介されていた『それでも夜は明ける』の感想です。

奴隷制度についての映画とは知らず全く前情報なしにパッケージのみで興味が湧いて見てみましたが、ものすごく重たい映画でした…。見終わったあと立てなくなるほど圧倒されました。でも見ることができて本当に良かったです。

2014年のアカデミー作品賞受賞作品です。(この年はゼログラビティが最多ノミネートで特に話題になっていたんですね)

 

『それでも夜は明ける』あらすじ・出演者情報

あらすじ

舞台は1841年のアメリカ。北部にすむ自由黒人であるソロモン・ノーサップはバイオリニストとして働き、妻と子供二人と幸せに暮らしていました。ある日演奏の誘いを受け、商談のために出向いた酒の席で眠ってしまい、翌朝目がさめると手足を拘束されていました。自由黒人であるという証明がない彼は、誘拐されたのちに奴隷として南部の白人に売り渡されることとなります。

登場人物

ソロモン・ノーサップ / プラット - キウェテル・イジョフォー
エドウィン・エップス - マイケル・ファスベンダー
ウィリアム・フォード - ベネディクト・カンバーバッチ
ジョン・ティビッツ - ポール・ダノ
パッツィー - ルピタ・ニョンゴ
サミュエル・バス - ブラッド・ピット

主演を務めたのはイギリス出身の俳優のキウェテル・イジョフォーです。『オデッセイ』などにも出演している実力派俳優です。脇を固める俳優陣もマイケル・ファスベンダーベネディクト・カンバーバッチ、そしてブラッド・ピットとかなり豪華です!

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『それでも夜は明ける』町山さん解説。ブラッド・ピットがどうしても作りたかったアメリカ・奴隷制度の実話

原作は1853年のソロモン・ノーサップによる奴隷体験記 『Twelve Years a Slave』です。実話ということですね。

ブラッド・ピットがオーナーを務める製作会社が手がけた本作ですが、当初は黒人奴隷をテーマとした映画ということで興行収入があまり望めないだろうと言われていたようです。

商業的にヒットしないと判断され、当時タッグを組んでいた映画会社から制作を断られ、かなりもめたようです…。それでも他社と契約を結びなんとか制作することとなりました。

それだけブラッド・ピットがどうしても作りたかった映画ということなのでしょう。ヒットするかどうかはわからないけれども、後世に残したい映画だったのです。

町山さん曰く、ブラッド・ピット自身は南部のミズーリ州の出身で、彼の母親はキリスト教原理主義者でかなり保守的な思想の持ち主のようです。いまだに黒人差別の思想が根深く残っている自らの故郷と戦うという意味でも、この映画を作ることを決心したのです。

以降ネタバレ含みます!お気をつけください。

『それでも夜は明ける』自由黒人が暮らしていた北部と黒人奴隷制度が維持された南部

驚いたのは、南北戦争以前のアメリカは北部と南部で文化や慣習、人種に対する考え方も全く違っていたということです。

本作は1841年の誘拐事件を描いているので南北戦争終結より20年ほど前ということですね。

北部で暮らしていたソロモン・ノーサップは生まれてから一度も奴隷だったことはなく、自由黒人として暮らしていましたが、南部ではいまだに奴隷制度が残っていました。南部ではアフリカから奴隷を輸入していましたが、輸入が禁止されたので、奴隷がかなり不足していたようです。

そこで一部の業者は北部から黒人を誘拐して無理やり売買していました。

誘拐され、南部にいってしまえば環境も何もかも違い、自分の価値観は通用しなくなります。拘束してしまえば、誰も彼が自由黒人だなんて疑わないんですね。証拠も何もないので、彼は自由黒人としての本名も語ることを許されず、プラットという名で生活します。

同じ国でもここまで環境が違うと、異国に連れ去られたような気持ちになります…。

『それでも夜は明ける』アメリカ南部。まるで自分も奴隷になったような気持ちに…

誘拐されてからは本当に見ているのが辛く、とにかくリアリティ溢れる凄まじい奴隷体験記となっています。

ソロモンは奴隷がどういう生活をしているのかという実態を全く知らないので、未知の体験をさせられている状態です。見ている私も同じように感情移入することができるのです。

南部で転売されるソロモン

船に詰め込まれ南部に連れて行かれたソロモンは、奴隷市場で丸裸にされます。健康状態をみるためなのだと思いますが、中には母親が子供の前で裸にされたりもしていました。そして家族は団結しないように別の奴隷主に買われ、バラバラにされてしまいます。

過去に団結し反乱を起こしたことがあったので、奴隷主は決して家族を作らせないようにしているようです。

最初はウィリアム・フォードという奴隷主に買われたソロモンでしたが、フォード自身はそこまで残忍な奴隷主ではありませんでした。しかしフォードの元で働く部下の方が過激に奴隷をしいたげていました。

少しだけでも気に入らないことがあればムチ打ちされてしまい、制度上はウィリアムの所有物であるにも関わらず、ソロモンを勝手に殺そうとしたりもします。やがてもっと残忍な奴隷主であるエドウィン・エップスのもとに転売され、さらに悲惨な日々を送っていきます。

性暴力を受ける奴隷のパッツィー

そこでは綿をつむ仕事をさせられますが、いつも綿を多くつむ少女の奴隷パッツィーは、よく働いているにも関わらずエップスから頻繁に性暴力を受けています。そしてエップスのお気に入りである彼女はエップスの妻から目をつけられ、しまいには裸で倒れるまでムチ打ちされてしまいます…。

働きを評価されることもなく、とことん人権なんてない、そんな奴隷にされてしまった人々の悲痛な叫びが映像から伝わってきます。

『それでも夜は明ける』黒人だけでなく白人の心すら破壊した奴隷制度

黒人の人々は人間として扱われず、本当に悲惨な時代だったのだということがよくわかります。そして奴隷制度というものは白人たちにも大いなるダメージを与えたのです。

間違っていてもやめられないフォード、黒人少女を愛していたエップス

最初の奴隷主であるフォードは、本当は奴隷制度は間違っているとわかっていながら、やめることができないという状況でした。自分からそんなことをしてしまうと、今度は自分が周りの白人たちから差別される側になってしまうからです。経済力もあまりなく、自分から新しい動きをすることは当時は難しかったのかもしれません。

また、残忍な奴隷主であるエップスでさえ、お気に入りのパッツィーのことはムチ打ちするのをためらっていました。世間体のために白人の妻と結婚していましたが、本当に愛していたのはパッツィーだったのかもしれません。だとしても暴行しているので相当歪んだ愛情ではありますが…。

自分でムチ打ちするのがいやだからといって黒人であるソロモンにムチ打ちさせたりと、本当にめちゃくちゃで残忍なこともしていましたが、「私はこうして黒人を痛めつけているのが楽しいんだ」といっているときのエップスの目は全く笑っていませんでした。

時代が白人奴隷主を作ったのかもしれない

必ずしもものすごい差別主義者だから奴隷制度を採用していたのではなく、時代がそうさせてしまっていた、部分も少なからずあったのだと思います。

本来なら差別主義者ではなかったはずの人々が、時代の流れによって制度に従わざるをえない状況になり、おかしくなってしまっていたのかもしれません。そういうものだと教え込まされ、自分に残された良心の部分は見ないようにして。

もちろん当時の白人奴隷主をかばうわけではありません。本当に卑劣な行為をしていたのは事実です。でも自分がその奴隷主側の環境に生まれてしまった場合、果たしてすぐに奴隷制度をやめる行動を起こせるでしょうか…。

『それでも夜は明ける』『グリーンブック』『ブラック・クランズマン』未だなくなっていない人種差別。

この映画を見て思ったのは、奴隷制度と現在の人種差別問題は切っても切れない関係にあるということでした。

先日アカデミー賞で作品賞を受賞した『グリーンブック』は1960年代の話で、本作から100年ほど後の時代ですね。奴隷制度は無くなってもやはり土地柄もあり南部では黒人差別は根強く残っていました。

『それでも夜は明ける』を見るとなぜ南部はああいう土地なのか?ということがより深くわかると思います。

現在公開中の『ブラック・クランズマン』は1980年頃が舞台なので、『グリーンブック』よりもまたもう少し後の時代ですが、奴隷制度のあった時代から使われている黒人差別用語を警官が使っている様子を見ても、差別はまだまだ無くなっていません。

このように時代とともにだんだんと差別は無くなっているようには見えても、まだ根強く残っているのです。そしていまでも奴隷制度は素晴らしい制度だったと考えている、とんでもない人々も存在しているのです。過去の歴史を知ることは、今なおはびこる差別問題を解決する糸口になるのだと思います。

『それでも夜は明ける』歴史の授業では教えてくれない真実が詰まった濃厚な134分

逃げることもできず、助けを求めることもできなかった黒人の人々の苦しみが詰まった映画です。

歴史の授業ででは習わないような、想像もつかないような悲惨な出来事を知ることができると思います。思い出したくもない辛い体験をしたのにも関わらず貴重な記録を残してくれたソロモン・ノーサップと、自らの地位を顧みずそれを映画化し世界に広めてくれたブラッド・ピットを始める製作陣に感謝を述べたいです。

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画像出典:IMDb “12 Years a Slave”