2012年7月31日放送のTBSラジオ「たまむすび」にて町山智浩さんがご紹介していた「クイーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落」を観ました!
ベルサイユ宮殿をアメリカに建てようとした破格の成金夫婦がジェットコースターに乗って?転落していく壮大な崩落ドキュメンタリー映画です。そう、現実の話なんですよ!
目次
『クイーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落』のあらすじ
主な登場人物
- デビット・シーゲル(ウエストゲート・リゾート創設者)
- ジャッキー・シーゲル(デビットの妻)
- 8人の子供たち
- 使用人たち
あらすじ
1993年のとある家族。夫、デビット・シーゲル74歳。妻、ジャッキー・シーゲル43歳。
デビットは再再婚を経てジャッキーと結婚。無一文から自力で色々と企業を興し、タイムシェア方式(共同所有)のリゾートマンション企業で巨万の富を得ます。
ジャッキーは才女ながら、ミス・フロリダ上がりの野心家。ブロンドに長身、豊胸手術もこなし、二回り以上年の離れたデビットの妻に収まります。
二人の生活は、沢山の使用人、8人の子供たち(養子も含め)と共に、人生の絶好調。しかし、2008年のリーマンショックにより全財産破産。すべてを失くした夫婦と家族は・・・
密着中にまさかの富豪一家転落!ローレン・グリーンフィールド監督がつかんだチャンス!
「クイーン・オブ・ベルサイユ」とは?
タイトルの「クイーン・オブ・ベルサイユ」とは「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」でおなじみのマリー・アントワネットを表していて、このドキュメンタリー映画では妻ジャッキーのこと。
アメリカにベルサイユ宮殿を立てようとしたデビットとジャッキーの金持ちぶりがどれだけすごかったかは、町山さんの興奮も抑えきれない感じでした。
例えば飼っている犬はトイレのしつけなどされておらず、フンを片付けるだけの使用人がいたとか、転落した後も、実家に帰るために民間の飛行機に乗った時に、子供たちが乗客を見て「こんなに沢山の人たちを招待したの?」と言ったとか(自家用機しか乗ったことがなかった)。
富豪一家転落でチャンスをつかんだローレン・グリーンフィールド監督!
この映画はサンダンス映画祭に出品され、ドキュメンタリー部門監督賞を受賞しました。
実は、監督のグリーンフィールドはバブル状態の富豪を密着していただけのはずが、まさか撮影中に没落!逆にそこからあらわにされた夫婦の人間性に惹かれて撮り続けたと言っています。
女王ジャッキーのポジティブシンキングを見て!
この映画の見どころと言えば、実は妻のジャッキー。さすが「クイーン」と銘打ってあるだけあって、素晴らしいポジティブ・エネルギーの持ち主。
ミス・フロリダ出身、金髪で整形手術、豊胸手術などと聞くと、絵にかいたような「アメリカン・ブロンド(ちょっと軽い女の子)」と思われがちですが、田舎の貧しい家庭に育った(そこはデビットと共通)彼女は大学に進学し、なんとIBMにエンジニアとして就職!
美貌だけではのし上がれないとよくわかっていた人なんでしょうね。何より、この人はほんとに「大地の母」的な包容力を持っていて、崩壊したシーゲル家において、ただ一人絶対にブレない強さと愛を発揮しています。
デビットがただの気難しい老人と化していくのに対して、ジャッキーはどんどん肝っ玉母さんになっていき、本来持ってる知性と美しさがドンドン出て来て応援したくなりました。
女が強くなるには、愛と知性が必要なんだよね。
転落一家から学べるもの – 人生は一生懸命生きたもん勝ち!
わかっていながらも、やっかみも含めて「ばっかじゃない?」って思う彼らの贅沢な生活。
例えば、子供たちの乳母が住んでいる小さな家は、以前は子供たちのお人形遊びのにための家でした。そして、盛大なパーティーや自家用ジェット機での移動。あちこちにほったらかしになっているジャッキーのブランド物の服やバッグ。そもそも、「ベルサイユ宮殿をアメリカに建てる」という壮大な計画も進んでいたわけで・・・。
当然、すべてを失い崩落していくさまも「やっぱりね」と思います。
でも、このドキュメンタリーの面白いところは、実は大富豪が転落した、そのことよりも、転落したことによって、ジャッキーと言う仮想の「クイーン」が、文字通りシーガル家の家長となって、夫と子供、残ってくれた使用人たちのメンタルケア、資金集めまで頑張る後半部分にあります。
「クイーン」がね、カッコ良いんですよ。
その方法自体は、「ばっかじゃない?」って言っても良いようなものですけどね。人間は、とにかく一生懸命生きるが勝ち!理由なく?「パワフルな元気」を貰える映画です。
マリー・アントワネット関連作品
画像出典:IMDb “The Queen of Versailles”
前川クニコ
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