『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』の感想。日本アニメにインスパイアされた超人的ヒーロー誕生!

今回は、「アメリカ流れ者」で町山智浩さんが2017年5月16日に紹介されていた『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』の感想です。そもそも「鋼鉄ジーグ」が何なのかよくわかっていませんでしたが、そんな私でも楽しんで鑑賞できました!早速どんな作品なのかご紹介したいと思います。

 

『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』あらすじ・出演者情報

あらすじ

舞台はイタリア・ローマ、いわゆる犯罪都市。
強盗などの犯罪を重ねていたエンツォは警察に追われている途中で川に落ち、放射性の廃棄物を全身に浴びたことで鋼鉄のような身体と超人的な力を手にします。
父親の麻薬取引が失敗してしまったせいでマフィアに襲われそうになっていたアレッシアは、エンツォに助けられたことで彼を「鋼鉄ジーグ」と重ね合わせて慕うようになります。

登場人物

エンツォ - クラウディオ・サンタマリア
アレッシア - イレニア・パストレッリ
ジンガロ - ルカ・マリネッリ
セルジョ - ステファノ・アンブロジ

主役のエンツォを演じるクラウディオ・サンタマリアはローマ出身の俳優です。演技だけでなく歌唱力も評価されていて、本作のエンディングテーマでも彼が素晴らしい歌声を披露しています。
アレッシアを演じたイレニア・パストレッリはモデルとして活動しておりなんと本作が映画初出演とのことです。

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町山さん解説。イタリアでは永井豪原作の日本のアニメ『鋼鉄ジーグ』が大流行

『鋼鉄ジーグ』とは漫画家・永井豪が原作者である日本のアニメーション作品です。

1975年に日本で放映され、数年後にイタリアでも放映された影響で、イタリアの40〜50代くらいの人たちは『鋼鉄ジーグ』で育ったといっても過言ではないくらい認知度が高いようです。
映画の公開にあわせて、永井豪氏もコメントを寄せていました!

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アメリカではウルトラマンが流行していたという話もあり、案外各国で日本のアニメがブームになっていることってあるんですね!

ヒロインのアレッシアはアニメ『鋼鉄ジーグ』が大好きな少女ですが、決してマニアックな趣味をしているというわけではなくイタリアでは国民的なアニメなのです。

以降ネタバレあります!お気をつけください!

『鋼鉄ジーグ』無骨なヒーローと子供っぽいヒロインが愛おしい!

エンツォは手に入れた力を犯罪に使うばかりで、ATMを引っこぬいて強盗をはたらいたりしていたのですが、アレッシアにもっと世のために力を使うように懇願され、徐々に正義感が芽生えてくるようになります。

この2人の関係性が、『レオン』のレオンとマチルダっぽい雰囲気があります。ひょんなことから共同生活が始まってしまい2人でご飯を食べながら「鋼鉄ジーグ」のアニメをみたりするんですが、無口なエンツォとちょっと天然なアレッシアのその奇妙な距離感が愛おしいです。

私が特に印象に残っているのは、2人で古びた遊園地に行っていたシーンです。動かない観覧車をエンツォの超人的パワーでぐるぐるまわし、アレッシアが無邪気に笑っていたのがほっこりしました。

このようにクライムサスペンスでありながら、実はほのぼのするシーンも結構あるんです。

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『鋼鉄ジーグ』クレイジーな悪役キャラが最高すぎる!

主人公のエンツォはマフィアと対峙していくこととなりますが、そのマフィアも一筋縄ではいかないような軍団です。
とくに悪役であるマフィアのボス・ジンガロのキャラクターがかなり個性的で、近年稀に見るクレイジーな悪役であることは間違いありません。

意味もなく人を殺しまくる残忍な男ですが、イケメンで歌が上手いというギャップが楽しいです。
歌手志望の殺人鬼ということで、自分でスマホで音楽を流して歌いながらガシガシ人を殺してましたね…。笑

殺人鬼もネタ切れ気味な昨今の映画界ですがこれはなかなかいなかったタイプの殺人鬼ではないでしょうか。バイオレンス系の映画が好きな方は必見です!(ブラックユーモアたっぷりのマシュー・ボーン監督作品好きはぜひ!)

町山さんによるとジンガロが歌い上げている曲はサンレモ音楽祭というイタリアンポップスの祭典である音楽祭でヒットした曲なんだそうです。

また、ジンガロは超人的パワーを手に入れたエンツォが「スーパークリミナル」として世間を騒がせているのをみてものすごい嫉妬に駆られます。
俺も有名になりたい!という承認欲求むき出しの稚拙な部分もなんだか憎めなくて、個人的には好きなキャラクターです。

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マシュー・ボーン監督作品

『鋼鉄ジーグ』イタリア犯罪都市のリアリティと漫画的要素の共存

アメコミヒーローと一線を画す現実味

アメコミヒーローと一線を画しているのは、おそらく重厚な空気感なのでしょう。

テロの脅威にさらされているイタリアのローマの殺伐とした空気は、戦闘シーンに臨場感を持たせています。
超人的なパワーを表現するためにある程度CGは使われていますが、そんなに多用されていないのでアニメーション作品っぽくなってしまいがちなヒーローアクションとは一味違った独特なヒーローものとなっています。

勿論そういった作品はそれはそれでいいとは思いますが、大掛かりなCGやダイナミックな映像技術とは莫大な予算があって初めて実現できることなのです。
おそらくこの映画は低予算で作られていそうだなあと想像できますが、その代わりにストーリーに現実味を持たせたりキャラクターの個性を大切にすることで、映像技術だけに頼らず映画の魅力を様々なところに行き渡らせています。

この作品に関してはそういった犯罪都市のリアルな部分に、鋼鉄の肉体と超人的な力というコミック的要素が合わさったことで、エンツォという無骨ながら人間味のあるヒーローが誕生したのです。

イタリアの社会問題も読み取れる作品

エンツォは毎食ヨーグルトばかり食べている貧困なチンピラで、初めは私利私欲のために力を使い犯罪をやめませんでしたが、そんな悪いやつなのに最後に残ったひとかけらの良心を持ってしてアレッシアを助け出したのです。

お金がなく自分の身の回りのことで手一杯なまさに現代に生きる人間という感じがします。
自分の人生になかなか価値を見出すことができなかったエンツォがクライマックスでは見知らぬ少女の命を救う場面もありました。観衆の一人にあなたは誰?と聞かれた時「俺は鋼鉄ジーグだ」と答えたシーンはなかなかグッとくるものがありました。

アレッシアの存在、そして「鋼鉄ジーグ」のDVDが彼に正義の心を芽生えさせたのです。

また、アレッシアが「鋼鉄ジーグ」を支えに生きるようになった経緯もなかなかシビアです。彼女は母親が亡くなった後、父親に性的虐待を受けたせいで精神を病んでしまったのです。やけにとぼけた子供っぽい女性だなと思ったらそういう衝撃的な背景があったのですね…。それでも前向きに生きていこうとする彼女の明るい振る舞いに励まされます。

イタリア社会の抱える闇
の部分もしっかり描かれているうえで力を持ったヒーローが現れることで、人々に希望を与えてくれるようなストーリーとなっています。

痛快な戦闘シーンもお楽しみいただきたいですが、その背景にある社会的な問題にもぜひ注目していただきたいです。

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『鋼鉄ジーグ』はヒーローものが好きじゃない人にこそ見てほしい!

クライムサスペンスでありヒーローもののようでもあり、さらに日本のアニメやイタリアンポップスなどなど様々なカルチャーが出会ってしまっている新感覚な作品となっています。

しかしながら、ごった煮のB級映画という訳ではありません!

お話自体はなかなかシリアスなトーンで進みますのでB級好きでなくともお楽しみいただけます。

また「鋼鉄ジーグ」を知らなくても問題なく楽しめます!私はあまりヒーローものもロボットものも見ませんが、そういう人の方が楽しめるかもしれません。

暗いニュースばかりの現代、誰もが心のどこかでヒーローの登場を待ち望んでいるところがあります。
そんなある日突然超人的な力を手に入れたら、自分は正義のために行動する事ができるのか?そんなことを考えるきっかけにもなる傑作です。

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画像出典: IMDb “Lo chiamavano Jeeg Robot”

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