『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』ネタバレ感想。成りすまし創業者はアメリカを愛した男?

2017年5月16日に「たまむすび」で紹介された『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(原題:The Founder)を観ました。

今では世界中で知らない人はいない「M」と黄色いアーチのマーク。マクドナルドが、どうやって大きくなっていったのか。

いや~、これを観て、しばらくマックは食べなくても良いと思ってしまった私です。

アメリカでファストフードというシステムを作ったマクドナルド兄弟から、マクドナルドを乗っ取ってしまった成りすまし創業者?の物語です。

この映画を読み解くキーワードとなるのは、

  1. マクドナルドから始まったアメリカの均一化
  2. トランプ大統領の愛読書
  3. アメリカを愛した移民

というあたりでしょうか。では紹介していきます。

 

『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』あらすじ・出演者

あらすじ

1950年代。52歳のレイ・クロッグは、ミルクセーキ製造機を売るしがないセールスマンだった。

ある日、8台もの注文が入り、疑問に思ったレイはその店に足を運ぶ。店に着くと長蛇の列。しかしあっという間にカウンターへ到着。早い!しかも、注文から30秒でハンバーガーとコークとポテトがレイの手に。

驚愕のシステムを備えた店の名前は「マクドナルド」。

創業者のマクドナルド兄弟を口説き落としたレイは、この店をフランチャイズで展開し、大きなチャンスを掴もうと動き出した・・・。

出演者情報

レイ・クロッグ:マイケル・キートン
ディック・マクドナルド:ニック・オファーマン
マック・マクドナルド:ジョン・キャロル・リンチ
エセル・クロッグ:ローラ・ダーン
ジョアン・スミス:リンダ・カーデリーニ

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ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ(字幕版)

『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』町山さん解説。トランプ大統領も愛読「パワー・オブ・アメリカン・ドリーム」

物語の軸は、一人の男のアメリカン・ドリーム。サクセスストーリーです。

しかし、実態は「乗っ取り事件」。

マクドナルド兄弟が苦労して創り上げた「マクドナルド」を、レイ・クロッグという男が権利を全部奪い取り、最終的に「創業者」と名乗ることになったと言う。

何冊もの本にもなっており、事件自体に真新しさはないのですが、なぜ今(放送時は2017年)この映画が創られるのか?

そこに町山さんのメッセージが光りました!

マクドナルド誕生の時代背景

マクドナルド創業は1954年。

その時代のアメリは好景気に沸き、大きな家に車、お休みの日は家族でドライブが主流となりつつありました。

しかし、郊外に車で家族が行くレストランがまだ少なく、加えて新しいお店は味も様子もわからないという懸念があります。

そこで、本当の?創業者であるマクドナルド兄弟が考えたのが、徹底した「システム化」と「味の均一化」でした。

先ず品物を3点に絞ります。

  • ハンバーガー
  • ジュース
  • ポテト

それから、「流れ作業」。

本当に、何故これに「特許」を取得しなかったのか、と私でも悔やまれる次第ですが。

例えば、パンを開く人、肉を焼く人、包む人など、作業を分担して同じ人がずっとやり、品物が次の作業に移動できるように「導線」を作り、絶対に味と品質が変わらないようにする。

徹底したオートメーション化の実現でした。

これによって、不良のたまり場だったドライブインは、家族が安心して、いつでも美味しいハンバーガーが食べれる場所へと変わったのです。

今では当たり前のファストフードの誕生ですね。

マクドナルドから始まった「アメリカの均一化」

町山さん曰く、この「マクドナルド」から、アメリカの「均一化」が始まったと言っても過言ではない!とのこと。

アメリカのスーパーは、どこに言っても同じような感じなのだそうです。

コンビニでもディズニーランドでも、「流れを変えない」ことが、アメリカ文化を創ってきた。

そして、その時代を踏襲しているのが、なんと!ドナルド・トランプなのです!

町山さんはアメリカ在住ということもあり、かなり切実にトランプの影響を感じるようでした。

トランプ大統領の愛読書とレイ・クロッグの愛読書が同じ!

実は、もう一つ、こんな逸話が・・・。

レイ・クロッグが売れないセールスマンだった時。彼が聴いていたレコードがあります。

それは、モーガン・ビンセント・ピールと言う人の自己啓発の音源でした。

彼の書いた「パワー・オブ・アメリカン・ドリーム」は、実はトランプ大統領の愛読書で、トランプは一時期、ピールの教会へも通っていたほどの傾倒ぶりだったそう。

「トランプ的アメリカは、マクドナルドから始まった!」

町山さんの名言です。

しかし、トランプ政権が描いた「パワー・オフ・アメリカン・ドリーム」は今や終わりを告げようとしています。

アメリカを巨大化させた「均一」と言う、大きな壁が崩れるであろう「理由」も見えてくる映画です。

『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』欲しかったのはシステムではなく「名前」だった!?アメリカを愛した移民

レイ・クロッグは実はチェコ人。

つまり、これもトランプが大いに毛嫌いする「移民」と言うことになります。

彼(レイ・クロッグ)がなぜ、これほどまでに「マクドナルド」を欲しかったのか。

それは名前だったのです。

本物の創業者である兄弟の姓「マクドナルド」は、アメリカを象徴する名前でした。

映画にも出てきますが、何故「マクドナルド」に入れ込んだのか、という質問に

「名前が良かったんだ。いかにもアメリカで。」

と答える場面が出てきます。

だから欲しかった。

アメリカ人になりたかったから。

(マクドナルド兄弟はシステムを誰にでも公開していた)

この事件は、正確に考えてみると、

「会社を乗っ取る」のではなく、「創業者に成りすました」事件だった

と思います。

その証拠に、レイは本当にマクドナルドを愛していて、システムを変えたり、品質を変えることは絶対にしなかった。

一度、経費が掛かりすぎるシェイクのアイスを、粉ミルクにしていますが、結局アイスに戻されました。

そういう意味では、心から「マクドナルド」を、アメリカを愛していた男だったのかもしれません。

『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』捨て身のマイケル・キートンが上手すぎて、ハンバーガーが大嫌いになる!

実はこの映画を観た時、マイケル・キートンの変貌ぶりに驚きました。

風貌が変わってたこともありますが、「バットマン」の時のようにギラギラしたものが無く、知らない俳優さんのようでした。

しかも、50代でそれまでに、色んな商売に手を出しては失敗して、自己啓発の音声を聴きながら夢だけ追ってるにしては、ふわふわした透明感で、なんか得体のしれない男だったんですが、「マクドナルド」を手に入れると決めた時から、あまりにも「マクドナルド」を愛しすぎるが故に「バットマン」復活!

くらいにギラギラしてくるのに、嫌悪感さえ感じました。

レイが花束を持って見舞いに現れるシーンに怒り心頭!

終盤、「マクドナルド」を失ったショックで、創業者兄弟の兄が倒れた病室に、レイが花束を持って見舞いに現れ、小切手を渡すシーンがあります。

ひょっこり現れたレイを見て、もはや唖然と口を開けている兄弟に向かって、値段の書いてない小切手を渡す。

兄が「なんの値段だ?」と言うと、「治ってから話そう」と言って、その病室を出ていくんですが、そのシーン、一貫して、強いのは兄弟の目線と意志。

それに気圧されたようにレイが初めて後悔するような顔をします。

「悪いことをした」。

だから金額を書けと言えなかったのかと思うと、心底怒りがこみ上げました!

「あんた、そんな肝っ玉でこの兄弟の夢を奪ったのかよ!っ!二度とマックバーガーは食わないぞ!」

・・・って思わせたマイケル・キートンの勝ちですよ~!

この実直で、心底真面目な兄弟を演じたニック・オファーマンとジョン・キャロル・リンチも素晴らしかった!

知らないところで変化していく自分たちの人生に不安を感じながら、1号店を護っていた、根っからのアメリカ人をしっかりと演じ切っていました。お見事!

『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』チャンスの神様に前髪しかないのは何故か。答えは「マクドナルド」にあるんです!

結局、兄弟の人生を奪い取って大成功を収めたマクドナルド。でも、50代でその名前に出会うまで、レイはただただ、闇の中を邁進していました。

「チャンス」と言うのは、いつ、どこで、どんな風に目の前に飛び出してくるのかわかりません。だから、備えておかなければ。

「チャンスの神様には前髪しかない」のは、瞬時にその前髪を捕まえないと、逃げてしまうから。何回も、つかみ損ねた前髪に、「マクドナルド」と言う名前がついた瞬間、しっかりと掴んで離さなかったレイの勝利だったかもしれません。

人生の中で、何回も前髪に手が届かないことがあったとしても、本当に掴むべき瞬間が来れば、絶対に逃がさない。しっかりと前を向いて歩いていきたいと思った映画でした。

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ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ(字幕版)

画像出典:IMDb “The Founder”

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前川クニコ

前川クニコ

「言葉」で伝える世界に魅了されてライターになりました。リーディング・パフォーマンスもやっています。面白さが伝わる記事を目標に、今日も書いてます。