『ゴーン・ガール』の感想。怖い妻のイヤミス映画。女性は自分の狂気に気づくかも?

今回は、映画評論家の町山智浩さんが2014年10月7日に、TBSラジオ「たまむすび」の中で紹介していた映画『ゴーン・ガール』について語りたいと思います。

好きな人にはたまらないイヤミス映画ですよ!

 

『ゴーン・ガール』あらすじ・出演者情報

あらすじ

主人公ニックは、地元の片田舎・サージの短大で講師を勤めながら、妻のエイミーと暮らしています。この日ニックは、エイミーとの5回目の結婚記念日の朝を迎えていました。双子の妹マーゴに、結婚記念日がどれだけ憂鬱なのかを語っています。この5年で、ニックとエイミーの関係は冷え切ってしまっていました。

毎年結婚記念日には、お互いにプレゼントを贈り合っていたニック・エイミー夫婦。特にエイミーからは謎解きのように、プレゼントを探さなければならないイベントを企画されていました。それが億劫なニックは、今年も始まるのか…と重い足取りで帰宅します。

しかしそこにエイミーの姿はなく、家は荒らされていました。エイミーの失踪を確信したニックは警察に通報、近所の住人や報道者が注目する出来事となったのですが…。

監督・出演者

〈監督〉
デヴィッド・フィンチャー
〈キャスト〉
ニック・ダン:ベン・アフレック
エイミー・エリオット・ダン:ロザムンド・パイク
マーゴ・ダン:キャリー・クーン

監督のデヴィッド・フィンチャーは、ブラッド・ピット主演の映画「セブン」といったサイコスリラーや、映画「パニック・ルーム」など、独特なサスペンス作品が多いですが、今回の映画『ゴーン・ガール』は、ミステリーの中にも、笑いや日常の夫婦ドラマが描かれた内容となっています。

主人公を演じたベン・アフレックは、映画「アルゴ」で監督兼出演として携わり、アカデミー賞とゴールデングローブ賞を受賞しています。妻役のロザムンド・パイクは、この映画『ゴーン・ガール』での演技が脚光を浴び、ゴールデングローブ賞や、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。彼女の出世作となったと言っても、過言ではないかもしれませんね。

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『ゴーン・ガール』町山さん解説。抱腹絶倒のイヤミス映画?実話を元にした、夫婦の話。

原作者ギリアン・フリン (Wikipedia)

映画『ゴーン・ガール』の原作小説は、全米で600万冊以上も売れた人気作品だそうです。ギリアン・フリンという作家が執筆したそのお話は「イヤミスの傑作」と言われているとのこと。

イヤミスとは「嫌なミステリー」の略で、読後に嫌な気持ちにさせられるストーリーのことを指します。日本だと湊かなえさんが有名ですよね。

これだけ聞くと映画『ゴーン・ガール』は、なんとなくハッピーエンドではない、迎えたくない結末が待っているミステリーなのかな…と予想してしまうのですが、映画評論家の町山さんいわく、抱腹絶倒のジェットコースター映画になっているということなんです!一体どういうことなのでしょう…。

原作のストーリー自体は、アメリカで実際に起こった「スコット・ピーターソン事件」を元に作られています。クリスマスイブに妻が失踪してしまったと通報した夫が、実は、妻を殺した真犯人だったことが明らかになった…という事件です。

映画『ゴーン・ガール』は、原作とはまた違った展開・テーマで、町山さんの仰るように抱腹絶倒のコメディ要素も満載ですので、ただイヤミスなだけではない作品となっています。

イヤミス小説家ギリアン・フリンの処女作「KIZU-傷-」がドラマ化

こんなイヤミスな『ゴーン・ガール』原作者のギリアン・フリンですが、処女作『KIZU-傷-』が2018年にHBOによってドラマ化され全米で大ヒットしています。HBOといえば現在『ゲームオブスローンズ』(レビューはこちら)で飛ぶ鳥も落とす勢いの制作会社ですね。

あらすじは、エイミー・アダムス演じる新聞記者が少女連続殺人事件を追うと、そこには自分のトラウマの謎が・・・という、こちらもイヤミスなストーリーになってますよ。

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KIZU-傷-#1「消えろ」

『ゴーン・ガール』妻エイミーの失踪、容疑者に仕立て上げられた夫ニック

妻エイミーが失踪し、初めはメディアや周囲の人間から、可愛そう、だとか、ハンサムな夫、といった印象を持たれていたニックですが、次第にその立場に陰りが出てきます。

そもそもニックという人間は、良くも悪くも打算的に動けるような人間ではありませんでした。最初の記者会見の中で記者から笑顔を求められたニックは、妻が失踪しているにも関わらずそれに素直に応じてしまい、不謹慎な写真がメディアに載せられてしまいます。

魅力的なルックスだけれども、ちょっとおバカ…という印象でした。

ある時エイミーの日記が発見され、そこに書かれた夫婦関係の崩壊や、夫婦が金銭的な問題を抱えていたこと、さらにニックからの暴力に怯えていたエイミーの姿などが世間の知るところとなり、ニックは次第に犯人として疑われ始めます。

加えて家宅捜索では、大量の血を拭いた後などが発見され、状況はどんどんニックにとって不利な方向に進んでいってしまいます。

こうした展開に、本当にメディアの恐ろしさを感じますし、それに操作される大衆のイメージを覆すことのなんと大変なこと…。冤罪というのは、案外簡単に出来上がるシチュエーションなのかもしれませんね。

なぜニックはこのような状況に追い込まれているのか、一体誰が何の目的で…と考えるまでもなく、ニック本人は、妻エイミーへの不信感が募っていきます。

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『ゴーン・ガール』妹マーゴもかばいきれない、ニックは教え子と浮気するクズ夫だった・・・

観客としては、ニックという男性に対し、夫婦生活で努力が足りなかったかもしれないけれど、妻を殺す決定的な理由は無さそうだし、妻が失踪したと判明した際の慌てぶりなどは、大なり小なりエイミーを大切に想っているのかな?という印象を受けました。

加えて兄よりも賢いであろうマーゴが味方していることで、疑われてるニック可愛そう…と誰もが同情票を入れていたその時…。

なんとニックは自分の元教え子と浮気をしていたのです。

しかも、避難している妹マーゴの家で一夜を過ごすという軽率さ…。結局マーゴに見つかり、なじられます。当然です。徐々に男・ニックのだらし無さや、思慮の浅い人間性が明らかになっていきます。

浮気相手が登場した時には、そうでなければいいなと思っていた状況がそのまま形になっていたので、クズ夫という印象操作の材料に事欠かないニックに呆れてしまいましたが、浮気相手は若くて綺麗でボインで、ニックではなくとも男性は心惹かれてしまうのでしょうか…。

人ごとではない、でも誰もが、自分には起こるわけないと思いがちなパートナーの浮気…結婚生活に影を落とす出来事ですね。エイミーが途端に不憫に感じられるシーンでした。

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『ゴーン・ガール』女性なら共感?自分の中にもあるエイミーの狂気・・・

エイミーがなぜ居なくなってしまったのか、エイミーがニックに対して抱えていた想いなどの詳細は、映画を観て感じて欲しいのですが、女性は特にエイミーの気持ちがわかる、という人が多いのではないでしょうか。

エイミーが映画の中で登場するのは冒頭でこちらをジッと見つめる少し不気味なシーンと、不可解な失踪によってニックが疑われたあとの、映画の3分の1以降です。

彼女が劇中で繰り返す行動は、まあ常軌を逸していなければ出来ないような事ばかりですが、あながち自分の心の中にも、エイミーを否定できない狂気の要素があることに、観客の女性たちは気づくのではないでしょうか。そして男性は、女性という生き物の恐ろしさや、本当の意味でパートナーを理解できていないのかもしれない、といった不安にかられるかもしれません。

互いに恋をし、愛し合って結婚したはずの2人も、長い時間を共に過ごす中でその新鮮さを保ち続けることは不可能ですよね。

映画では、ニックとエイミーの出会った頃や、甘やかな2人の関係が描かれた回想シーンもあり、一体何が2人に起こってしまったんだと思うのですが、夫婦関係の行く末は、何でもない日常が作り上げていくものだということを、映画のストーリーが進むごとに実感する作品となっています。恋だの愛だの終わっても、一緒に生きていくのが夫婦なんですね。

『ゴーン・ガール』あなたが知っている愛する人の姿は、その人の真の姿ですか?

かつて真剣に愛し合ったニックとエイミーですが、失踪したエイミーが残した状況は、ニックの知らないエイミーの一面を物語っていました。
しかし、人は突然変わる生き物ではありません。案外パートナーの本当の顔を知らないまま一緒に過ごしてきたのかもしれない…と、新たな視点を持って、結婚というシステムや自身の結婚生活、男女関係の本質を見つめられる作品となっています。ぜひ、ご自身のパートナーと共に鑑賞されることをオススメします!

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『ゴーン・ガール』関連作品

KIZU-傷-#1「消えろ」

画像出典:IMDb “Gone Girl” / BS10 “KIZU-傷-”

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