今回は、「アメリカ流れ者」で町山智浩さんが2017年10月に紹介された映画『ブレードランナー 2049』の感想です。
目次
SF映画の古典1982年公開『ブレードランナー』のつづき。
これは説明不要かもしれませんが、『ブレードランナー2049』は1982年公開映画『ブレードランナー』のつづきです。
『ブレードランナー』は、大友克洋氏の漫画「AKIRA」をはじめとするその後のSF作品、また、現在の都市の形ともいえる未来都市のイメージを世界中の人に与えたともいわれています。
ニューヨークのタイムズスクエアや、渋谷のスクランブル交差点の様子を見れば、それが過去のこういったSF作品に影響を受けたことをまざまざと感じますね。ちょっと前に行った香港の混とんとした大都市感もまさにブレードランナー的でした。
当時の『ブレードランナー』の舞台イメージとしては、日本の新宿歌舞伎町をモチーフにしたそうです。首都高も撮影に使われているとか。
町山さんによる、ブレードランナー映画化までの経緯も面白い
1982年『ブレードランナー』の映画化までの経緯は面白いものでした。SFファンが「ブレードランナーはSFの古典だ!」と言ってるのとは大違いのやりとりがありました笑
それは、売れない役者がSF作家フィリップKディックの作品『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』に目を付けて、映画化することで成り上がろうとする野心の話。しかも、OKしたディックもその理由が「連れていた恋人が好みだったから」だとかw
ちゃんと彼から奪ってるようです^^;
また、監督をしたリドリー・スコット氏の話も面白くて、続編の『ブレードランナー2049』は監督をしていません。なぜなら、大好きな『エイリアン』に今も熱中してるからそんなの撮ってる暇はないと。
本人たちと、ファンが期待するものは別なんですね笑
1982年版『ブレードランナー』を見ていた方が楽しめる
『ブレードランナー2049』は『ブレードランナー』のつづきなので、過去作を見ていた方が楽しめます。というか、見ていないと楽しさが半減するとも言えます。
ざっくり過去作のあらすじを言うと、
書いてみたら、だいぶ簡単に説明できてしまいました笑
これを知っていないと、『ブレードランナー2049』はわからないので。なぜかと言えば、その後の2人を追うミステリーになっているからです。
その1点ですべての話を持っていくのですが、それだけで持っていける理由があります。これも、導入部分をざっくり書くと、
この1点のミステリーなんです!
ものすごく興味深くないでしょうか?
過去作の『ブレードランナー』を知っていれば、その骨の女性の子と、そして父親のことなども想像できますよね??
なので、ぐいぐいと引っ張られていきます。このミステリーの持って行き方がうますぎるので、そのストーリーテリングについて触れたいと思います。
ストーリーテリングのうまさ。
今回の『ブレードランナー2049』はドゥニ・ヴィルヌーヴ監督なのですが、ストーリーテリングがうますぎます。難解だと思われるストーリーなのにすっと入ってくるんですね。
ときどき、「どういうこと?」って種明かしされたのにポカンとなってしまう映画もあるんですが、これは誰もが分かるようになってます。
登場人物は、
・主人公:新型レプリカントK(ライアン・ゴズリング)
・ヒロイン:ホログラムの彼女ジョイ
この二人が、その「子供を産んだレプリカントと、その子供」の謎を追っていきます。
私は、映画館で見て、Amazonビデオでも3回くらい見ました。はまってしまって。で、分かったのですが、実は、
これ、一人ではなくて、ヒロインジョイがいるのがかなりポイントで、ジョイが「もしかして○○じゃない?」というアドバイスをしていくんですね。
世界観が大きすぎて観客が「どんな話なんだっけ?」という置いてけぼりをしないように、ものすごく親切設計になってました。「あれ?」と思ったときに、ジョイがサジェスチョンしてくれるんですね~
できたホログラム彼女です!
とてつもなく孤独な男の代表=レプリカントK
私がAmazonビデオで何度も見てしまったのは、これですね。
レプリカントK(ライアンゴズリング)が、ものすごく孤独な男なんです!
たとえ、自分をものすごく孤独な男だと思ってる人がいたとしても、レプリカントKを見ればましかもしれません。
身寄りがなく、過去の記憶も真実かあやしむ状態。仕事だけが心のよりどころという状態。ようやくできた彼女=ホログラム・・・
彼は、現代の一人暮らし男性の象徴なんです・・・・
だからこそ、この物語を追う必要があるのです!!そこに自分の存在意義があるのです!!!泣
大衆を描かないドゥニ・ヴィルヌーヴ監督
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のうまさというか、こんなやり方で大作を作れてしまうんだ!という発見だったのですが、ぜんぜん大衆を描かないんです!!!
『メッセージ』もなんですが、あれは世界中にあの「ばかうま型宇宙船」がやって来たというシチュエーションなんですが、実際に描くのはそのひとつ。しかも、それは広大な地域に降り立ったもの。そして、内容は、女性科学者と宇宙人との対話。
この『ブレードランナー2049』も、世界と宇宙を舞台とした話なんですが、基本的に登場人物しか描かないんです。
そうそう、モブキャストがほとんどいないとも言えるんですね。(いるにはいますが)
これで思い出すのは、宮崎駿と庵野秀明の対談(だったかな)。エヴァンゲリオンが大ブームになっていたころ、宮崎駿監督が何かで言っていたのですが「群衆を描かないといけない」と批判していたんですね。たしかに、エヴァンゲリオンは当事者しか出てこないですよね。逃げ惑う住民たちなんてシーンないですもんね。
一方で、宮崎駿著の漫画版『風の谷のナウシカ』を読めば、とにかく群衆を描いています。
ちょっとそのことを思い出しました。
ただ、これはクリエイターとしてのヒントでもあると思いました。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督はまだまだ若手で、それまで大きなお金で映画を撮れなかったはずなので。それでも大作を撮る工夫はできるということを見せてくれているともいえます。
スターウォーズやマーベルやレディ・プレイヤーワンのような大群衆を描かなくとも、アイデア次第で人類とレプリカントとの戦争は描けるのだと。
芸術的要素
最後に、美術的な観点で。最高です!これもなんか創作意欲を掻き立てられます。絵を描いている人や、絵画に詳しい人なら、もっとたくさんの発見があると思います。
以上、『ブレードランナー2049』はいろんな観点で楽しめる映画です。とくに孤独な一人暮らしの彼女のいない小さな部屋に住んでいる男だったら見るべきですよ!!泣
Cody
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