今回は、映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』と、WOWOWの番組中で紹介されていた映画『プロメテウス』を紹介していきます。
『プロメテウス』は、エイリアンシリーズの「始まりの物語」として設定された映画です。
かつては名作だったリドリー・スコット監督のエイリアンシリーズも、気づけばB級作品扱い・・・。
今作ではエイリアンシリーズの復権を目指したようですが、果たしてエイリアンブランドは取り戻せたのでしょうか!?
では、紹介していきます。
目次
『プロメテウス』あらすじ・出演者情報
はるか昔の地球で、人間に似た風貌をした白い体の生物が、滝を見下ろすように立っていました。
その生物がある液体を飲み込むと、体がボロボロと溶けていき、消滅してしまいます。しかしそれは、人間のDNAの始まりでした・・・。
時は経ち2089年、考古学者のエリザベス・ショウは古代遺跡の発見から、人類の起源となる別の惑星の存在を確信し、恋人のチャーリー、アンドロイドのデヴィッドを含めた数名の調査隊として、共宇宙船プロメテウス号で目的地へと宇宙の旅に出ることになります。
2年の冷凍休眠を経てクルーたちは目的の惑星LV-223に辿り着くのですが、そこには危険な生物が生息していたのです。
リドリー・スコット
〈キャスト〉
エリザベス・ショウ:ノオミ・ラパス
デヴィッド:マイケル・ファスベンダー
チャーリー・ホロウェイ:ローガン・マーシャル=グリーン
メレディス・ヴィッカーズ:シャーリーズ・セロン
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町山さん解説。『プロメテウス』はシナリオをいじりすぎた・・・
映画のタイトルであり、宇宙船の名前でもある「プロメテウス」ですが、ギリシャ神話に登場する男神で人間の創造主とも言われているようです。
なにやら壮大なテーマを抱えた物語のようだ、ワクワク、と思って観ると・・・若干拍子抜けです。
キリスト教に関連した要素も含んでいる作品のようで、日本人にはあまりなじみのない概念が介在していることも、あり、とにかくストーリーを把握しづらい!
脚本をいじりまくったリドリー・スコット監督・・・
まあ、様々ツッコミどころのある映画なのですが…ひとまず町山さんが解説してくださった部分をかいつまんで紹介します。
映画「プロメテウス」の監督はリドリー・スコットですが、脚本はジョン・スペイツという方で、この方が書いた脚本の時点では様々整合性が取れるストーリであったそうなんです。
このジョン・スペイツの脚本を、リドリー・スコット監督がいじりまくって、ストーリーがつぎはぎのようになってしまい、意味不明な展開の連続になっています。
エイリアン誕生までの流れである、人にタネを植え付けてそこで育って人から生まれてくるという設定も一部無視・・・
エイリアンというタイトルでは、これまでの作品から既にB級扱いのジャンルになってしまうため、今回プロメテウスにしたはずが・・・。
物語としては、エイリアンの前日譚となります。
見どころは、映像の美しさとグロテスクさ?
映像としては、さすがリドリー・スコット監督といったところで、迫力のある美しいシーンがたくさんあります。
映画の後半は町山さんいわく「ゲロゲロブシャー!」という表現がふさわしいグロテスクな映像も多くなり、恐怖の出産シーンもあるので、妊婦さんにはオススメできませんね・・・。
この回のたまむすびでの町山さんは、エイリアン達をちんちん怪獣なんて呼びながら、いつも以上に愉快な紹介をしてくださっています笑
以下ネタバレを含みますのでご注意を!
『プロメテウス』医療監修の甘さは突っ込まざるを得ない!
突っ込みどころ満載の映画なので、いちいち突っ込んでいると映画が進まないのですが、この医療ポッドの中での出来事は、もう深い知識が無くても無視できないほど破天荒な内容でした。
ネタバレになりますが、エリザベスが恋人チャーリーとの性交により、途中で謎の生命体をお腹に宿してしまいます。
チャーリー自身に、エイリアン関連のウイルスによる危険が迫っていたせいでエリザベスは巻き添えになる形です。
エリザベスとチャーリーというカップルには非常に違和感
少し脱線すると、エリザベスとチャーリーというカップルには非常に違和感を感じました。チャーリーも考古学者なのですが、とてもじゃないけどそういったお堅い職についている風貌には見えません。
ローガン・マーシャル=グリーンという俳優さんが演じています。映画『クォーリーと呼ばれた男』や、『スパイダーマン:ホームカミング』といった作品に出演されていますが、ガラの悪い役が多いそうで、笑顔のとても素敵な役者さんなのですが、どうしても登場シーンではチンピラにしか見えませんでした。(笑)
まさかの男性専用の医療ポッド!!
さて、話を戻してエリザベスの妊娠ですが、通常の妊娠ではなく、ものすごいスピードで成長しエリザベスに痛みと恐怖を与えていきます。
このままでは自分の身体を突き破って生まれてくると感じたエリザベスは、医療ポッドに自ら入って「帝王切開」の項目を選択するも、なんと男性専用の医療ポッドであることがそこで判明します。
切り替えて腹部手術にすると何とか許可が下り(術式の指定が男性のみであり、女性が入ることは問題なさそうな都合の良い医療ポッド)、ものすごいスピードで手術準備開始!
麻酔もそこそこに皮膚切開がはじまります。
実は私は以前手術室で働いていたのですが、なんとまあ医療監修の甘いこと…。
お腹を切ったらすぐに謎の生命体が取り出されましたとさ!
もう笑うしかない雑さで作られたこのシーンは、映像が美しいのでグロテスクさだけは際立ってました。
『プロメテウス』の謎。どうして医療ポッドは男性専用だったのか?
一刻も早くお腹のなかにいる生命体を出したかったエリザベスですが、帝王切開を望んで向かったはずの医療ポッドは「男性専用」でした。
クルーには女性もいたのに不思議な設定ですよね。
リドリー・スコット監督監督はあるインタビューで、映画『ドラゴン・タトゥーの女』を近年で最も興味深い映画であると語ったそうですが、ドラゴン・タトゥーの女は女性への性的虐待や男性の圧倒的優位な立場を描き、ことごとく女性は暴力に見舞われます。
その映画にヒロインとして登場しているのが、エリザベスを演じているノオミ・ラパスです。
ドラゴン・タトゥーの女はミレニアムシリーズとして人気を博している作品なのですが、小説が題材となっています。その小説の作者もまた、女性としての生きづらさや過去の暗い体験から物語を書き上げたようです。
リドリー・スコット監督はドラゴン・タトゥーの女を観て、プロメテウスの主人公にノオミを抜擢したということでしたので、多少作品としても影響された部分はあったのでしょうか。
プロメテウスでは、エリザベスが不妊であるということから始まり、予期せぬ(あるいは望まない)妊娠・堕胎、そしてエイリアンたちと一人闘う姿から、
- 望むも望まないも含め生命を誕生させてきた女性のこれまでの歴史
- 出産ができるという男性にはない能力
- にも関わらず男性が優位である社会が未だ変わらない現状
を描いてた作品であるという印象を受けました。
医療ポッドが男性専用である理由も、そんな設定の一部なのかな?と思いました。
『プロメテウス』エイリアンファンは刮目してほしい作品。
映像は素晴らしいです。映画館で観ることはもう叶いませんが、町山さんも3Dで観ることを推していました。
グロテスクなお化け屋敷を回っているようなスリルを味わえる作品でした。
今作で、果たしてB級作品にまで失墜した「エイリアン」ブランド力を取り戻せたのか!?は、見た方それぞれにお任せします。ぜひエイリアンシリーズファンは刮目してほしい作品です!
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プロメテウスの続編『エイリアン:コヴェナント』
画像出典:IMDb “Prometheus”
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