映画『さざなみ』ネタバレ感想。結婚45年目に知る元交際相手のこと。男女でまったく見え方が違う映画。

本日は、映画評論家の町山智浩さんが、ラジオ『たまむすび』の中で紹介した映画『さざなみ』について、ご紹介します。

45年間、夫婦として暮らしていても、互いに知らないことがあるというのは、まだまだ発掘できる部分があると捉えるか、隠し事をしていたと捉えるか…。

この映画は、男性と女性とでまったく見え方が違うのでは?と思わされました。男女の心のカラクリ?

では、紹介していきます!

 

映画『さざなみ』あらすじ・出演者情報

ケイトとジェフは、今年結婚45年目を迎える夫婦です。

40年目の時には、ジェフの体調が優れなかったため、結婚を祝うパーティーを行うことができませんでした。そのため、2人はこの週末の土曜日に、盛大な会を開催する予定です。

そんな月曜日、変わらない穏やかな朝を迎えた2人だったのですが、ジェフにある手紙が届いたことで、2人の関係は徐々に変化していきます。

その手紙はスイスの警察から送られてきたもので、ジェフがケイトと結婚する前に交際していた女性の遺体が、氷の中から発見されたというものでした。

〈監督〉
アンドリュー・ヘイ
〈キャスト〉
ケイト・マーサー:シャーロット・ランプリング
ジェフ・マーサー:トム・コートネイ

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映画『さざなみ』主人公の夫婦を演じる俳優2人は、昔はイケイケ!?

町山さんは、主演の2人の過去出演作品や、当時はどのような人物あったかというのを、時代背景とともに紹介されていました。

ケイト役:シャーロット・ランプリング

ケイトを演じたのは、女優のシャーロット・ランプリング

若い頃はアイドル的なイギリスの女優さんで、当時のイギリスというのは、ファッションや音楽や政治的な活動に関して、若者がものすごく革命を起こしていた時代だそうです。

その中で彼女は、スタイルも良く愛らしい見た目で、その風潮のアイコン的な存在として活躍していたそうです。

ジェフ役:トム・コートネイ

一方のジェフを演じたのは、俳優のトム・コートネイ

シャーロット・ランプリングと同じ時代を生きてきた彼は『長距離ランナーの孤独』という映画で、労働者階級に生まれ葛藤する青年を演じているそうです。

その当時のイギリスでは階級が厳しく、生まれた時の階級は一生変えることができない世の中だったそうですが、映画はそこに立ち向かっていくストーリーだそうで、現在82歳のトム・コートネイは、この役で英国アカデミー賞の新人俳優賞を受賞しています。

こんなふうに、今は老夫婦を演じている2人ですが、かつては華々しく活動をされていて、大変すばらしい経歴をお持ちであるということを加味しながら映画を観ると、また違った印象で楽しめるかもしれません。

以下ネタバレを含みますのでご注意ください!

映画『さざなみ』ラジオから流れる言葉が、ケイトの心を揺らす

映画の中では、ところどころで、意味深な歌詞の音楽やラジオが流れます。

ある時は、運転する車の中で流れていた音楽が、「僕の心から出て行ってくれ」なんていうことを歌っているものだから、もうケイトは気が気ではありません。

まさに夫ジェフの最近の様子を表しているようで、たまらず音楽を切ってしまいます。

また、別のシーンでは、ラジオからある放送が流れています。

内容は、ローマ人が素晴らしい水路を作り上げた…とかなんとかで、彼らが泥炭を発見した場所が別の場所であれば、この水路はここまで立派にはならなかった、もし別の場所で採掘していたら、この水路は存在しない…といったことを話しているわけです。

これを聞いたケイトがどこまで何を考えたのかはわかりませんが、私の心の中にはあることが浮かびました。

それは、

もしジェフがケイトを、出会った場所で見初めてくれなければ、2人の夫婦としての道は存在しなかった、もしジェフの昔の恋人が生きていたならば、一体どの水路が太く立派なものに育ったのか…

ということです。

そうした運命について考えているのを、ケイトの翳りのある表情が語っていた気がします。

映画『さざなみ』ジェフの答えに背筋が凍り付く・・・。もし、昔の彼女が生きていたらあなたは彼女と結婚していたの?

このジェフという夫は、映画の初っ端からかなり無神経な言葉や行動の連続でした。

スイスから送られてきた手紙の内容を聞くケイトに対し『僕のカチャ(昔の恋人の名前)だよ』と、言わなくてもいい名前を口にしたり、しかも『僕の』…自分の妻を前に信じられない態度です。

ケイトとは年の差婚をしたようなことも映画の中では語られていましたので、いくつかのシーンでは歳をとってボケ始めたじいさんが、急になりふり構わず昔の恋人に焦がれ始めたのかと思いました。

まあこのことは当たらずとも遠からずなのですが、昔の彼女が若い時の姿のまま遺体で発見されたと聞いて、まるで彼女がいきているかのような錯覚に陥って、心だけあの日にタイムスリップしてしまったのでしょう。

でもさすがに、ケイトからの質問に対するシーンでは、もう背筋が凍りつきました。

「もしそのまま彼女が生き続けて、一緒に過ごしていたなら、彼女と結婚していたの?」

夫は何と答えたのか・・・。

答えは映画をぜひご覧ください。

男性からすると、いえ、女性からでも、この質問がいかに不毛なことを聞いているかというのはわかります。

わかるのですが、聞かずにはいられなかったのです。

彼女が生きていたなら、ケイトとジェフは出会っていなかったかもしれない。そうなれば今の現実は存在し得なかった。

それはわかっていても、後に出会ったケイトを選んだことは、過去を超える素晴らしい愛があって、それがどんな仮定の比較にも勝るのだということを、聞きたかったんですよケイトは…。

はい、ちょっと熱がこもりすぎましたが。笑

映画『さざなみ』男性と女性では、見え方の全く異なる結末

この映画は本当にカラクリ映画といいますか、男性が観ると、ただ単に妻が夫の恋人だった女性に嫉妬して、怒りが抑えられなくなるというお話に終始しているように見えるかもしれません。

女性って何考えてるかわからなくて怖いな、怒ってるのに怒ってないとか言って面倒だな…なんて声が聞こえるようです。

しかし女性目線では全く違って、シーンが進むごとに、ケイトの中には嫉妬と同時に夫に対しての怒りが湧き、そしてそれよりもはるかに大きく膨らんでいく気持ちが、失望、期待はずれといったものでした。

それらの静かな感情が映画の中をゆっくり満たしていきます。

ジェフの無神経な言動、今ケイトが何を言って欲しいのか、長い月日を共に過ごしながら、そんなことにも気がつけないのかという彼の浅はかさを知り、この45年間は水泡に帰すのではと思われるほど、ケイトの気持ちがマイナスの方向に向かって行きます。

町山さんも分かっていない女心?

町山さんは解説の中で、

男性はフォルダ保存と言われる恋愛スタイルであり、それが映画でも描かれていて、ケイトがどんどん嫉妬に苛まれ、乙女になって行く…

と表現していましたが、女性の私からするとその解釈は、少し違うと思いました。

自分たちの関係はこんなことでは失われていかないはずだという、年月に裏付けられているはずの関係性が急に脆弱なものになったことを信じたくないケイトのすがるような気持ち、でもそれを修復しようとせず自分の思いに浸り続けるジイさん、かと思いきや勝手に切り替えて(いるように見せてるだけかも)ケイトと向き合ったり…

私も女性の1人として、ケイトと共に途中何度もジェフに期待し、喜びを感じ、裏切られ…を繰り返しました。

恐らくジェフは本当に素直な男性で、だからこそ急に蘇る過去の恋愛を明け透けに思い出さずにはいられなかったのでしょうが

「長年一緒にいるからといって、生きてる女性でもあるまいし…思い出すくらいでそんな怒るなよ」

といったジェフの甘えがみえるシーンもあり、女性からすれば怒り心頭に発するというものです。

長い時間を過ごしているからこそ、ケイトはジェフが、自分を悲しませたりしないと思っていたのに…ジェフは色々隠すのも下手すぎます。

男性って、そういうところありますよね。

思い出すなら徹底して隠れてやってくれっていう…。笑

これを見て、妻のケイトがどんどん白けていくことに気づけなかった世の男性たち、要注意です!笑

映画『さざなみ』を見て、ぜひカップルやご夫婦で語り合って。

結局男は女心がわからないし、女は男心がわからないものですよね。

女性からの目線で観たこの映画ですが、男性にはどのようなストーリーに観えたのか、ぜひカップルやご夫婦で語り合っていただきたいです!これからの夫婦のあり方や、結婚を控えた方々も、現実は甘いことばかりではないのだというのを、良くも悪くも突きつけられる映画となっております。

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