『シュガー・ラッシュ:オンライン』感想。SNS中毒者は見て!ネット脳なら分かるあるあるネタにニヤリ。

今回は、「アメリカ流れ者」で町山智浩さんが2018年12月25日に紹介されていた「シュガー・ラッシュ:オンライン」の感想です。
鑑賞がすっかり遅くなってしまいましたが、ギリギリ劇場で見ることができてよかったです!

 

『シュガー・ラッシュ:オンライン』あらすじ・出演者情報

あらすじ

ゲームセンターのゲームの中に住んでいる大男ラルフと、少女ヴァネロペ。ある日、ヴァネロペのレーシングゲームのハンドルが壊れてしまい、このままだとゲームが廃棄されてしまうという緊急事態に陥ります。なんとかしてゲームのハンドルを手に入れるため、二人はゲームの世界を飛び出しインターネットの世界へ入り込みます。

登場人物

  • レック・イット・ラルフ – ジョン・C・ライリー(日本語吹き替え : 山寺宏一)
  • ヴァネロペ・フォン・シュウィーツ – サラ・シルバーマン(日本語吹き替え : 諸星すみれ)
  • フィックス・イット・フェリックスJr. – ジャック・マクブレイヤー(日本語吹き替え : 花輪英司)
  • シャンク – ガル・ガドット(日本語吹き替え : 菜々緒)
  • イエス – タラジ・P・ヘンソン(日本語吹き替え : 浅野まゆみ)

前作同様の主要キャラクターたちに加え、本作ではインターネットのキャラクターたちがたくさん出てきます。
吹き替えで鑑賞しましたがシャンク役の菜々緒さん、かっこよくてめちゃくちゃはまってました!

町山さんの解説。『アリー/スター誕生』と同じく男と女がテーマになってる!?

リアルな世相を反映

前作はゲームセンターが舞台となっていましたが、そのゲームセンターが本作ではかなりさびれてしまっています…。

リアルな世相を反映していますね。ヴァネロペのゲームである「シュガー・ラッシュ」のハンドルが壊れたときも、もう古くて部品がないから修理できないし、新しいハンドルがこのゲームの売り上げよりも高い…という世知辛い状況に陥ってしまいます。

だんだんさびれていく、とかだんだん飽きられていく、という問題は「トイ・ストーリー」の頃から永遠のテーマとして取り入れられてきました。

本作はそのさびれていくゲームセンターのゲームの中で生き続けるために、インターネットの世界に行くというストーリーですが、これがそう単純にはいきません。

『アリー/スター誕生』に通ずる男と女がテーマ?

また、町山さんの解説では、『シュガー・ラッシュ:オンライン』が『アリー/スター誕生』と同じ男と女がテーマとして描かれているとのこと。

『アリー/スター誕生』は、古い音楽に固執する男が、新たな世界に行く女性アリーに置いて行かれてしまう構図。

『シュガー・ラッシュ:オンライン』では、「ゲームセンターでしか生きられない」と言うラルフに対して、「インターネットの世界で生きるわ」と先を行くヴァネロペ。

可愛いアニメと思いきや、男女の深い関係性まで描かれていたんですね。アニメと侮るなかれです・・・。

以下ネタバレ含みます!お気をつけください!

『シュガー・ラッシュ:オンライン』ネット世界の可視化がすごい!あるあるネタ満載。

インターネットの世界に入るとラルフとヴァネロペは早速おびただしい情報を目にします。

ここの造形が、実際のウェブサイトを具現化しているのですごく面白いです。

検索エンジンのキャラクターは博士のような格好をしていて、言った単語を辞書で調べてくれるのですが、ヴァネロペが単語を言い切るまえに予測変換して、○○でしょ?○○でしょ?!というように先走って言ってくるというシーンも。

また現実世界では車の法定速度があるように、インターネットの世界では通信速度に規定があるという設定も面白いです。

ウェブ上のあるあるネタも上手いことアニメーションに落とし込んであって、すごくわくわくします。

中でも面白かったのが、ポップアップ広告のキャラクターが自分で看板を持って街頭で呼び込み勧誘をしている光景でした。

ウェブサイトを見ていて途中ででてきたりするとうっとうしいなあと思うこともあるポップアップ広告ですが、こんな風にキャラクターが呼び込みしている風景を想像すると…クリックしてしまいそうです。笑

でもこのポップアップ広告のキャラクターはなんか胡散臭い感じだったりと、細かいところまでシャレが効いていて遊び心満載です!

『シュガー・ラッシュ:オンライン』プリンセスが王子様を待つ時代ではない?

ゲームのハンドルを手に入れるためにインターネットに来たラルフとヴァネロペですが、ヴァネロペは広いインターネットの世界を見て、少し価値観が揺るがされます。

ヴァネロペがディズニープリンセスのウェブサイトの中に入り込んだ時、歴代のディズニープリンセスたちに遭遇します。白雪姫やシンデレラ、アナと雪の女王のエルサなどのプリンセスたちにあなたはどんなプリンセスなの?と問いかけられ、自分の本当にやりたいこととは何なのか考え直していきます。

町山さんもおっしゃってましたが、いままでディズニープリンセスたちは王子様に迎えにきてもらうというのが最終目標だったのです。

しかし、本作のヒロインのヴァネロペは王子様を待つのではなく、自立して自分の夢を叶えることを目標とします。

そして水面に顔を写しながら私の夢ってなんだろう?と問いかけていると(ディズニープリンセスあるあるらしいです。笑)・・・

スローターレースという過激なレースゲームでレーサーとして活躍するのが私の夢だ!!と気づきます。

優雅なオーケストラに乗せて物騒なキャラクターたちが歌い上げていきます。笑えるシーンのはずなのですが、やっとの思いで夢を見つけたヴァネロペに感動してしまい、私はここで涙腺が緩んでいました…。笑

このようにプリンセスの概念がどんどん変化していっているのです。従来の優雅なプリンセス文化を尊重しつつも、王子様と結ばれることがゴールではないのですね。
自分でやりたいことを見つけていくヴァネロペの姿はすごくかっこいいです。

『シュガー・ラッシュ:オンライン』ディズニーの枠を超えた多種多様なキャラクターが登場!

前作でも実際のゲームキャラクターをはじめ色んな絵柄のキャラクターが登場していましたが、インターネットの世界となるとさらに様々なキャラクターが登場していきます。

先ほども触れたスローターレースのキャラクターたちは、ちょっと物騒なキャラばかりです。

しかし主役の凄腕レーザーのシャンクとその仲間たちは、非常に殺伐とした世界感のゲームで暮らしているにもかかわらず、案外暴力で解決したりするタイプではなく理論的でお互いを尊重しあっているというギャップも面白いです。

また、ラルフがお金を稼ぐことに協力していた動画投稿サイトバズチューブのボスであるイエスは、最先端の流行を熟知しているIT企業のトップです。ディズニー映画で女性IT起業家のキャラクターが登場するとは前代未聞ではないでしょうか。

こういったかっこいい女性キャラたちが登場する一方で、ディズニープリンセスのような優雅な雰囲気の女性たちも登場し、それぞれの良さを尊重しているところがいいですね。

その他にもちょっとグロテスクな見た目のキャラも登場します。笑

それぞれのキャラの造形が全く統一されておらず、雑多で情報過多なインターネットというものをうまく表現していると感じました。

これはスピルバーグ監督『レディ・プレイヤーワン』(レビューはこちら)にも通ずるものがありますね。こちらもおすすめです!

『シュガー・ラッシュ:オンライン』楽しいだけがインターネットではない。垣間見える闇の部分

表向きは子供向けアニメですが、実は社会問題も盛り込まれています。本作ではインターネットの便利で楽しい部分だけでなく、闇の部分にもしっかり触れています。

ラルフがバズチューブで有名になった時、コメント欄に書き込まれたおびただしい誹謗中傷に直面してしまいます。

イエスは「コメントを見ないというのがインターネットの鉄則だ」と言っていましたが、これはほんと現実世界でも鉄則ですね…。ネットの世界とは人間の汚い部分がどうしても見えてしまう場所なのです。

そしてインターネットは刃物です。使い方を間違えると人を傷つけてしまうのです。

ラルフは完全に使い方を間違えてしまい、ウイルスを沢山増殖させ世界をどんどん破壊してしまいます。

こう言った負の要素にも触れることで、ただの子供向けアニメではなく大人でも楽しめる作品になっているのでしょう。

『シュガー・ラッシュ:オンライン』はSNS中毒の現代人にぜひ見てほしい!

わたしはこの作品をすごく楽しむことが出来たのですが、この作品の面白さがわかる人は多分完全にネット脳になってしまってると思います。笑
ネットあるあるが盛り込まれすぎていてついニヤリとしてしまいました。
買い物、調べもの、何から何までネット上で済ませてしまい、交友関係もSNSで完結してしまうような生活を送っている人々にぜひ見て欲しいです。
あなたが数秒で済ませるそのワンクリックも、インターネットの住人たちにとっては死活問題に繋がっているのかもしれません!

画像出典: IMDb “Ralph Breaks the Internet”