『ワンスアポンアタイムインハリウッド』ネタバレ感想。幼少期にタランティーノが見た1969年ハリウッド!

今回は、「アメリカ流れ者」で町山智浩さんが2019年7月30日に紹介されていた『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の感想です。

映画好きなら避けては通れないであろうクエンティン・タランティーノ監督の最新作です!「監督作品10作目を作り終えたら引退する」という説も飛び交う中、本作は9作目となります。

初日に鑑賞してきましたが、引退なんて言わないで!と言いたくなる素晴らしい作品でした…!

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』、日本語にすると「昔々、ハリウッドでね・・・」のような意味合い。

1969年、タランティーノ監督が幼少期に見たキラキラとしたハリウッドを閉じ込めたような作品です。一方で、カウンターカルチャー、「ラブ&ピース」を求めたヒッピームーブメントにもひずみが出ていた時代でもあったようです・・・。

 

『ワンスアポンアタイムインハリウッド』あらすじ・出演者情報

あらすじ

舞台は1969年のアメリカ・ハリウッド。

テレビシリーズ『賞金稼ぎの掟』で一躍スターの仲間入りを果たしたリック・ダルトンでしたが、今となってはすっかり落ち目の中年俳優。

リックに雇われている専属スタントマンのクリフ・ブースも、あまりスタントの仕事を得ることはなく、主な仕事はリックを撮影所まで送り迎えしたりリックの家の用事をこなしたりすることです。

時代に必要とされなくなりつつある二人とは対照的に、今売り出し中の映画監督のロマン・ポランスキーと女優のシャロン・テートの夫妻がリックの自宅の隣に引っ越してきます。

登場人物

リック・ダルトン – レオナルド・ディカプリオ
クリフ・ブース – ブラッド・ピット
シャロン・テート – マーゴット・ロビー
ロマン・ポランスキー – ラファル・ザビエルチャ
ジョージ・スパーン – ブルース・ダーン
マーヴィン・シュワーズ – アル・パチーノ
スティーブ・マックイーン – ダミアン・ルイス
ジェームス・ステイシー – ティモシー・オリファント
ウェイン・マウンダー – ルーク・ペリー
ブルース・リー – マイク・モー

タランティーノ作品は毎回俳優陣が豪華すぎることでも注目を集めていますが今回ももれなく豪華です。

『ジャンゴ 繋がれざる者』に出演したレオナルド・ディカプリオと『イングロリアス・バスターズ』に出演したブラッド・ピット、それぞれ過去にタランティーノ作品に出演していますが、共演するのは今回初なんだそうです。意外ですね!

女優のシャロン・テートを演じたのは『スーサイド・スクワッド』でハーレイ・クインを演じたマーゴット・ロビー 。彼女はディカプリオと共演作した『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』で一躍脚光を浴びました。タランティーノ監督の大ファンで、自ら監督に手紙を出したことがきっかけで今回の出演が決まったそうです。

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町山さん解説。1969年に起こった「シャロン・テート殺害事件」とは?

シャロン・テート(Wikipediaより)

1969年、ハリウッドを恐怖に陥れるような事件が起こりました。

妊娠中だった女優のシャロン・テートが、狂信的なカルト信者によって無残に殺害されてしまったという事件です。

シャロンの夫であるロマン・ポランスキー監督はロンドンで撮影中だったため不在でした。シャロンは彼女の元婚約者のジェイ・セブリングと他二人の友人と自宅で過ごしていた時に突然襲われました。

犯人はチャールズ・マンソンというカルト教祖に支持された信者たちで、マンソン・ファミリーの名で知られています。

ヒッピームーブメントの衰退

町山さんによると、この事件はアメリカでは有名で、チャールズ・マンソンはヒッピーの女性たちを薬物で洗脳たりし信者を増やしていたので、この事件をきっかけにヒッピームーブメントは衰退していったそうです。

劇中でもヒッピーたちのひずみが描かれます。華やかな「ラブ&ピース」の裏もしっかりと見せています。

「シャロン・テート殺害事件」について本作の中でも描かれていくので、少し調べてことをお勧めします。

タランティーノ監督は、時代背景を知らなくてもこの映画は十分楽しめるよ!

と言っていましたが、私個人としてはこの事件についてはある程度下調べをしておいたほうが楽しめるかな〜、と感じました!

『ワンスアポンアタイムインハリウッド』のおすすめポイント!

まずはおすすめポイントを紹介します。

ここはそこまでネタバレでもないので、見てない人も読んで大丈夫かと思います。

CGなしで蘇った当時のハリウッド、タランティーノの映画愛

クエンティン・タランティーノ監督といえば、CGが嫌いで古典的な撮影技法を好むことで有名です。

本作では1969年のハリウッドを完全再現すべく、特別な許可を得て通りを貸し切って当時の街並みを再構築しています。

看板や標識など細部にもこだわり抜いて制作されています。

シャロンが街を歩いているシーンや、クリフが車で街を走っているシーンなど、セリフのないシーンも多いですが、街並みのクオリティがすごすぎてその美術に圧倒され、全く退屈しません。

また、リックとクリフは架空の人物ですが、シャロンは実在する人物なので、メイク担当者はマーゴット・ロビーのメイクには苦戦したとか。

映画に出演している時ではなく、オフの時のシャロン・テートを意識した顔立ちになっているようです。

また、作中では当時の映画の映像などもそのまま流れます。タランティーノの幼少期の思い出や、この時代の映画に対する愛が画面から溢れてきています。

落ち目俳優とその専属スタントマンという関係

クリフはリック専属のスタントマンという設定になっていますが、昔の映画業界では背丈の似たスタントマンを俳優が雇うということがあったそうです。

タランティーノ監督の現場にも過去にそのようなコンビがいて、非常に興味深く思いこのことを映画に盛り込もうと考えたのだそうです。

リックとクリフ、二人はビジネスパートナーでありながら親友であり兄弟のようでもあります。

しかし、リックが俳優として落ちぶれていきながらも豪邸で暮らしているのに対し、クリフはとても小さなトレーラーハウスに住んでいるというのがせつないです。

映画界において重要な役割であるにも関わらず、スタントマンはなかなか生活が苦しいということでしょうか…。

以降、結末に触れるネタバレになりますので、ご了承ください…!

【ネタバレ】『ワンスアポンアタイムインハリウッド』悲しい結末が近づいてくる・・・

シャロン・テート殺害事件」について知っている人は、鑑賞中だんだんと悲しくなってくることでしょう・・・。

自分の出演作品を映画館でみるシャロン、友人たちと楽しい休暇を過ごすシャロン、どのシーンでも天使のように描かれる彼女の姿は眩しい限りです。

事件の日は着実に近づいてきます。

殺される前はこんなに人生を謳歌していたんだと思うと辛くて仕方がないです。

ついにマンソン・ファミリーの連中がシャロンの自宅の前に現れた時、ゾッとしました。

ところが・・・??

映画界の仇討ち請負人タランティーノ!!

史実では、シャロン・テート宅に押し入るはずのマンソン・ファミリーの3人が、リックの家に押し入ってしまいます!!

え!!?

リビングにはクリフとクリフの愛犬のブランディ、奥にはリックの妻が眠っていました。

泥酔してプールでヘッドフォンをして過ごしていたリックは、思わぬ来客にも全く気づいていませんでした。

鉢合せたのはスタントマンのクリフ!

ブルースリーとの一見でも分かる通り、一筋縄ではいかない人物です笑

これがマンソン・ファミリーの運の尽きでした笑

そして、プールに逃げたファミリーのひとりに気づいた泥酔のリック!

さらなるオーバーキルが待ってました!!!

笑って泣ける最高のシーンでしたね。

この結末でタランティーノ監督がやったことは何だったのか?

私はタランティーノは、シャロン・テートという60〜70年代の輝かしいハリウッドの象徴のような人物を救うためにこの結末にしたのだと感じました。

シャロンが殺された理由は、前にシャロンの家に住んでいた人物にチャールズが恨みを持っていたというとばっちりのようなものでした。

人違いがきっかけで起こったような事件だったからこそ、人違いで逆に犯人たちの方が殺されるという皮肉な結末に感動してしまいました。

映画界の仇討ち請負人であるタランティーノは、今作ではシャロン・テートの仇をうってくれました。

映画に起承転結は不要、過去への敬意を忘れず描きたいものを描く

監督自身は本作を自分にとっての『ROMA / ローマ』(NETFLIXオリジナル映画)のような作品と語っています。

自分のアイデンティティと向き合ったような作品で、一本筋が通っているというよりはその時代の空気をそのまま描いているような作品になっています。

なので、起承転結があまりありません。

本筋とは関係のないシーンもたくさんあり、しかしそこがまた楽しめます。

2時間半程度の時間の間で起承転結をつける必要なんてないのかもしれません。

泥酔して氷水に顔をひたすレオ様、屋根の修理のためになぜか裸になるブラピ、流行りの音楽に体を揺らすマーゴット、その一つ一つのシーンがこだわりとサービス精神に溢れていて、見る者の視線を釘付けにします。

レオ様が楽屋でキレて暴れちらすシーンでは「これが見たかったんだよ!」と心の中で叫んでいました。

またそれらが、単に監督の描きたいものというだけでなく、その背景には映画の歴史に対する敬意が溢れているというところも素晴らしいです。

音楽、美術、そして映画、様々なカルチャーを知り尽くし、またそれらを愛しているタランティーノだからこそできることです。

『ROMA / ローマ』レビューはこちら

「映画を見た」という満足感、無心でかじりついてしまう一作

問答無用でおすすめしたい一作ではありますが、個人的には事件については少し調べることをおすすめします。

ただ一緒に鑑賞した友人は前知識なしでも楽しめたと言っていたので、どちらでも大丈夫かもしれません。
私は上映中にもう一度鑑賞しようかと考えています!

タランティーノ監督作品

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Nbcユニバーサル エンターテイメント

画像出典:IMDb “Once Upon a Time… in Hollywood” , 公式サイト