今回は、「アメリカ流れ者」で町山智浩さんが2018年4月10日に紹介されていた「犬ヶ島」の感想です。
すごく楽しみにしていた作品で、上映中、興奮しすぎてつい前のめりになるのをグッとこらえた記憶があります。笑
前売り特典にキャラクターのフィギュアが付いていたりと、かなりマニアをターゲットにした映画なのかな?と思っていましたが、確かにオタク心をくすぐられる要素満載の素晴らしい作品でした!
目次
『犬ヶ島』のあらすじ・出演者
あらすじ
舞台は20年後の日本。ウニ県メガ崎市では、ドッグ病が流行していた。市は人間への感染を防ぐため全ての犬を「犬ヶ島」へと追放してしまう。少年・小林アタリは愛犬を連れ戻すため、小型飛行機に乗って島へと降り立った。
登場人物
スポッツ – リーヴ・シュレイバー
チーフ – ブライアン・クランストン
レックス – エドワード・ノートン
キング – ボブ・バラバン
ボス – ビル・マーレイ
デューク – ジェフ・ゴールドブラム
ナツメグ – スカーレット・ヨハンソン
声の出演者については全く予備知識ゼロだったのですが、こんな豪華キャストだったと知った時はびっくりしました。笑
主人公の小林アタリ役のコーユー・ランキンなんと11歳の少年で、カナダ人の父と日本人の母を持つバイリンガルだということです。よくこんなぴったりな人材に巡り会えましたね!今回が声優初挑戦とのことです。
他にもずらっと渋いメンツが並んでいますが、スカーレット・ヨハンソン演じるナツメグの声は犬なのにやたらセクシーでしたね。納得です。
キャスティングからも気合いが入っている感じが伝わってきますね!
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町山さんの解説で知る。『犬ヶ島』は黒澤映画のオマージュが満載!
「犬ヶ島」は2018年のウェス・アンダーソンの監督作品です。
綿密に作り込まれた造形が作り出す映像美が特徴の監督ですが、過去には実写作品もアニメーション作品も幅広く手がけているというツワモノです。
町山さんの解説を聞くまで全く知らなかったのですが、「犬ヶ島」のこの独特の世界観は黒澤明の映画の影響があるとのことです。
なんとメガ崎市の市長の顔は、黒澤明の「七人の侍」の三船敏郎さんになっています!全く知りませんでした…無知でごめんなさい。。。
主要な犬のキャラクターも七匹ということで、まさに「七人の侍」を意識していると思われるのですが、その他にも随所にオマージュが施されているそうです。黒澤映画のサウンドトラックをそのまま引用している箇所もあり、監督の黒澤マニアぶりが垣間見えます。
監督は小津安二郎など他の古い日本映画にも影響を受けているそうで、日本映画へのリスペクトを持って制作されているようです。
こういう時に、古い映画も見ておけばよかったなあとひしひしと感じます。
もちろん見ていなくても十分に楽しめる内容となっていますのでご安心ください。
以降ネタバレ含みます!ご注意ください!
『犬ヶ島』の没頭してしまうほどの世界観を作り出したウェス・アンダーソン監督
ディストピア化した日本に海外では批判も。
近未来のディストピアと化した日本を描いたこの作品が、海外ではかなり批判されていたとのこと。町山さんの解説にもありましたが、公開時には、実際の日本はこんなのじゃない!日本文化をもっと学ぶべきだ!というような批判が相次いでいたようです。
個人的には、舞台がウニ県メガ崎市というジョークのような名前の架空の都市だという時点でそんな怒らなくても…という気持ちはあります。笑
そのジョークのような間違った日本のイメージというのが、逆にすごくこの作品の魅力となってると感じます。
全体の造形のおおもとにあるのはおそらく黒澤映画ですが、昭和レトロ・近未来・時代劇・学生運動・メカ・etc…というような様々な要素がミックスされていて、唯一無二の世界観を作り出しています。
あくまでも、日本をモチーフにしたフィクションと捉えて鑑賞するのがいいかもしれないです。
非リアルの追求、ウェス・アンダーソン監督作品の魅力。
私はウェス・アンダーソン監督の魅力は、圧倒的な非現実性だと思っています。
例えば、小林市長がお風呂に入りながら、服を着て浴槽の横に座っている研究員と話している、という変なシーンがあります。
五右衛門風呂のようなお風呂なのですが、しかもその前に黒電話が置いてあったりと、やはりどう考えても現実離れした世界観なんです。
この徹底した非リアルの追求によって、観客はこの独特の世界観に没頭できるのだと思います。
現実を一つ一つのエッセンスとして解体して、ミックスし、再構築することで完璧なフィクションの世界が出来上がっているのです。
ウェス・アンダーソン監督が犬でも見せるボーイミーツガール!
ウェス・アンダーソンの監督作品で、「ムーンライズ・キングダム」という作品があり、これが非常に甘酸っぱいボーイミーツガール物語なのですが、本作でもそう言った要素を垣間見ることができます。
犬なのに、なんでしょうこのロマンチックさ。
思わず感情移入してしまうような洒落た恋の予感を感じさせます。
それはひとえにキャラクターの温度感によるものでしょう。
よくあるCGアニメのキャラクターのような大げさな演技っぽい動きが、このストップモーションの人形たちには全くないです。
いい意味で生き生きとした感じがなく、すごく落ち着いていて、キャラクター自体も大人の人間のような性格の犬ばかりなのです。
あざとくないぬるっとした温度感がいいですね。こういう恋模様だとつい応援したくなります。
CGアニメのわざとらしい演技もあれはあれで好きなんですけどね。笑
『犬ヶ島』ストップモーションアニメでしか出せない現実感
ストップモーションアニメの醍醐味を存分に味わわせてくれるのも、本作の見所です。
犬たちの汚れた毛並みは平面アニメやCGでは再現できないようなもので、それだけでキャラクターとしての存在感がグッと増しています。
ライティングの演出も臨場感があり、登場人物の動作も非常に丁寧に作られていて、温かみがあります。
作業工程を想像すると恐ろしいほどの手間がかかっているのだと思いますが、やはり立体アニメにはそれにしか出せない味わいがあって、どんなにCGが発達しようと滅ばない手法なのだろうなと感じました。
『犬ヶ島』のセンスと圧倒的技術にただただ感嘆・・・
突飛な発想と独特のアートセンスを感じる作品なのですが、それを支える圧倒的な技術が存在しているからこそ、作品として成り立っています。
とにかく突飛な設定を考えればいいだとか、何か一つの設定に頼っているだけの映画が大コケしたりという事例は珍しくありません。
逆に、圧倒的な技術だけを売りにして、中身がおざなりというパターンもそれはそれで残念な作品となってしまいます。
アニメーション作品となるとより一層、そのバランスが偏りがちになります。
しかし、本作はその両方の点を十分に兼ね備えた作品だと言えるでしょう。
新進気鋭なセンスを持ちながら、ひたすら丁寧に綿密に作り上げるという作風は、ただただ感嘆いたします。
『犬ヶ島』は作るワクワクを思い出させてくれる名作!
平面・立体・CG問わず、アニメーションが好きな人全員に見て欲しい傑作です。
個人的にはアニメ史に残るレベルの名作だと思います。笑
2017年〜2018年は特に素晴らしいアニメーション作品が続々と日本公開された年だったと思います。
こういった完成度の高い作品が、自分の生きている世代で次々と輩出されていったというのは感慨深いものがありますね。
私は絵を描いたりアニメーションを作ったりしている人間ですが、そういう人ならより一層この「犬ヶ島」の世界観に没頭できると思います。
作ることの楽しさや、ワクワクを思い出させてくれるような素晴らしいアニメーション作品です。
ウェス・アンダーソン監督作品
画像出典:IMDb “Isle of Dogs”
浜村満果
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