今回は映画評論家の町山智浩さんが、TBSラジオたまむすびで紹介した映画「クラウド・アトラス」についてご紹介します。
SF好きの私が、なぜ今までこのような素晴らしい作品を観ていなかったのか、もっと早く出会いたかったと心から感じた大作でした!
魂の存在や、生まれ変わり、そういった自然を超越した思想を意識させながら、その時々での人との繋がり、他者を大切にすることの基本的な重要性なども表現している作品です。
なかなか複雑なSFになっていますので、下記のように考察も含めて解説・紹介していきます。
- 町山さん解説:特殊メイクについて
- 【考察】タイトルの意味とは?
- 【考察】ほうき星を受け継ぐとは?
- 【考察】時系列はどうなっているのか?
- おすすめの時代:個人的にはネオ・ソウル!
では、紹介していきます!
目次
『クラウド・アトラス』あらすじ・出演者情報
はじまりは、左眼の上あたりから頬にかけて大きな傷のある老人が、その眼の物語を聞かせようと一人静かに語りだすシーンです。
この映画では、6つの時代が、並行して展開されていきます。
・1つ目の時代:1849年の南太平洋諸島。弁護士のアダム・ユーイング(ジム・スタージェス)は、妻の父親が奴隷貿易の商人をしている関係で、自身もあるときその貿易交渉を行うため遠く離れた土地へ行くことに。そこで、ある奴隷に出会います。
・2つ目の時代:1931年のスコットランド。青年ロバート・フロビシャー(ベン・ウィショー)は恋人のシックススミスの元を離れ、地位と名声を手に入れるために、現在は病にて隠居している大作曲家のもとに弟子入りします。そこで『クラウド・アトラス6重奏』を作曲するのですが・・・。
・3つ目の時代:1973年のサンフランシスコ。ジャーナリストのルイサ・レイ(ハル・ベリー)はエレベータで、年を取ったシックススミスと偶然の出会いを果たします。彼から原子力発電所の秘密に関しての情報を得ようとした矢先に、彼が何者かに殺害され、自らも命を狙われることに。
・4つ目の時代:2012年のイギリス。編集者のティモシー・ガべンディッシュ(ジム・ブロードベント)は、作家ダーモット・ボギンズ(トム・ハンクス)の編集担当ですが、ダーモットが殺人を犯したことで、その著書が売れ、一気にはお金持ちになりますが…。
・5つ目の時代:2144年のネオ・ソウル。ソンミ451(ペ・ドゥナ)はクローンであり、純血種たちの奴隷のように、自由を奪われレストランで働かされていました。ある時、レストランに侵入した純血種のヘジュ・チャン(ジム・スタージェス)と出会い、彼と一緒に逃げることを提案されます。
・6つ目の時代:2321年のハワイ。文明が崩壊しており、地球の人類は絶滅の危機にさらされていました。島の住民であるザックリー(トム・ハンクス)はオールド・ジョージーという存在しない者の声に悩まされ続けていました。そんな時、文明の力を保っているプレシエント族のメロニム(ハル・ベリー)と出会い・・・。
〈監督〉
ウォシャウスキー姉弟
トム・ティクバ
〈キャスト〉
トム・ハンクス
ハル・ベリー
ジム・スタージェス
ぺ・ドゥナ
ジム・ブロードベント
ヒューゴ・ウィーヴィング
ベン・ウィショー
主演はトム・ハンクスでしょうか。トム・ハンクスといえば、私は映画『ダ・ヴィンチ・コード』が思い浮かびますね。また、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』でのレオナルド・ディカプリオとのやりとりも忘れられません。
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※情報変更はご容赦ください。
『クラウド・アトラス』町山さん解説。特殊メイクによって、人種も性別も年齢も演じ分ける!
この映画では、ある時代では主役であったり、ある時代ではわき役であったりと、演じる役柄や立場が異なりながらも、どうやら別の時代を生きた人間の生まれ変わりとして登場しているようです。
トム・ハンクスは、ある時は医者、ある時はガラの悪い作家、またある時は原子力発電所の職員を演じています。
中にはかなり特殊メイクを施されている俳優もいて、一見しただけでは同一人物が演じているとはとても思えないキャラクターもしました。
ぜひ映画をみて、発見してみてください。
特に印象に残ったのは、白人の俳優たちがアジア人のメイクをした姿です。
映画評論家の町山さんも話していますが、その顔にかなり違和感を感じます。(笑)
最初の登場では、白人がメイクしているとは思えず、もはや時代背景が飛びすぎていて、人類の顔の系統が変化したという映画の設定なのかと解釈してしまうほどでした。
極端な三角の眉毛に一重のつり目…普通のアジア人にもこんな顔なかなか居ないと思いながらも、目の離せない特徴的な顔でした。
町山さんは、若干差別的な要素も感じたようです。
【考察】『クラウド・アトラス』タイトルの意味の謎を考える。
- 【考察】タイトルの意味とは?
- 【考察】ほうき星を受け継ぐとは?
- 【考察】時系列はどうなっているのか?
クラウド・アトラスというタイトルは、直訳すると『雲の地図』という意味になります。
タイトルコールの映像では、クラウド・アトラスという文字が、細い雲の線のように描かれていく構成になっています。
このタイトルは、物語の中でフロビシャーの作曲した曲名(クラウド・アトラス6重奏)でもありました。
この曲が、ソンミの時代、そしてルイサの時代でも流れています。
時代を超えても愛され続けるこの曲を、登場人物たちはどこかで聴いたことがあるけれど、どこで聴いたのか思い出せない、そんな描写があります。
クラウド・アトラスという魂の記憶
私たちの人生の中でも、映画の中の彼らのように「あれ、この人どこかで会ったな」とか「この景色を見たことがある」という、いわゆるデジャブと呼ばれる感覚を体験したことがある人は多いと思います。
普段あまり意識してはいませんが、特別気の合う人や、初対面なのに前から知り合いだったような気にさせてくれる人がたまにいますよね。
ヘジュとソンミは、時代を超えて何度も何度も結ばれています。それは、2人の魂が、どの時代でも惹かれあってしまうからなのでしょう。
また、ザックリーとメロニムは、ある時代では惹かれあいながらも一瞬目を合わせるだけで終わってしまう時もあります。
見てる者にデジャブを呼び起こす。突然降りかかる懐かしさ
この映画の不思議な点は、なんだか登場人物たちの身に起こっていることが、まるで自分の身に起こっている出来事かのような錯覚を覚えることです。
映画を見ている者に「クラウド・アトラス」というデジャブを引き起こすようです。
もしかすると自分の周りで生きてる人の魂は、前世でも自分と近しいところで生きていた魂なのかもしれないと。
私は無宗教なので、あまり輪廻転生などの概念はわかりませんが、いつかの時代に魂が近いところで生きていた人と、きっと今も寄り添いながら生きているのかもしれませんね。
そう思うと同時に、出会うべき人、出会いたいと魂が望んでいる人に出会えていない可能性もあるのかなと思いました。
本当は知っていても思い出せない魂の結びつきが、思い出せた時には繋がり、思い出せない時には離れ、そんなふうに形を変えて存在し続ける関係性の変化の根源に、変わらずに存在する魂のつながりが存在する・・・
この感覚が、クラウド・アトラスという映画のタイトルの意味なのかもしれません。
【考察】『クラウド・アトラス』の「ほうき星を受け継ぐ人々」とは?
- 【考察】タイトルの意味とは?
- 【考察】ほうき星を受け継ぐとは?
- 【考察】時系列はどうなっているのか?
『クラウド・アトラス』ではそれぞれの時代に1人ずつ、同じ痣がある人物がいます。
ほうき星の形をした痣なのですが、ある時代ではそれをハル・ベリーが演じ、ある時代ではジム・スタージェスが演じていて、時代ごとにほうき星キャラを演じている俳優が異なります。
「ほうき星」は生まれ変わりを表す?
映画を観始めた段階では、
という意味かと思っていました。
「ほうき星」は生まれ変わりではなく、記憶を受け継いでいる証では。
しかし映画を観た後は、
と解釈しました。
正確なところは不明ですが、トム・ハンクス演じるザックリーが、ある時突然、記者のルイサ・レイやソンミの姿を夢に見ることがあり、何かの記憶がつながったメンバーたちであることが描写されています。
映画は、話の展開が突然飛んでいくのでついていくのが難しいかもしれませんが、youtubeでの予告編はそのつながりを丁寧につなげてくれた紹介となっているので、参照されることをお勧めします。
【考察】『クラウド・アトラス』時系列の謎を考える。
- 【考察】タイトルの意味とは?
- 【考察】ほうき星を受け継ぐとは?
- 【考察】時系列はどうなっているのか?
映画を観ていると、時代の古い順から新しい順へ、魂が移ろっていったわけではなさそうです。
というのも、6つ目の時代である未来のハワイで存在していた人食い族の歯が1849年の時代に発見されていたり、ネオ・ソウルで首輪を外すときについたほうき星の痣が、ほかのすべて絵の時代の主人公たちについていたりと、実際の時系列がバラバラです。
ここで思い出したのが、町山さんが以前紹介していた映画『メッセージ』です。
時間の捉え方が複雑で、過去から現在、そして未来といった具合に時間をとらえている私たちには、少し把握が難しい概念でした。
クラウド・アトラスでは、生まれ変わりは時系列でなく、その映画の構成のように、同時進行で起こっている出来事、つまりひとつの魂が同時にいくつもの時代を生きている、ということなのでしょうか。
もう一度映画を見直して確かめたくなる要素が満載でした。
『クラウド・アトラス』おすすめの時代:個人的には、ネオ・ソウルの時代が好きです。
ひとつひとつの時代が壮大なドラマなのですが、私は特にネオ・ソウルを舞台とした時代の物語が気に入りました。
ソンミ役のぺ・ドゥナは、映画『空気人形』や『リンダ・リンダ・リンダ』などに出演している、日本でも有名な韓国人女優さんです。
今年40歳になるそうで、クラウド・アトラス撮影時には33歳くらいだったということですから、本当に自分で言うのもなんですがアジア人は老けないですね。
一方のヘジュを演じたジム・スタージェスは、映画『アップサイドダウン』や、最近では『ジオ・ストーム』に出演していました。
なんと現実でも付き合っていたヘジュとソンミ!?
ヘジュ(ジム・スタージェス)とソンミ(ぺ・ドゥナ)は、映画の中で出会った時から惹かれあっているのですが、なんとこの二人、現実でも付き合っていたというではありませんか。
これは映画を観てファンになった私にとってはたまらない朗報でした。しかし、現在二人は破局してしまっているそうです。残念・・・。現実では、ひと時、魂が近づいただけだったのかもしれませんね。
アジア人をイメージした特殊メイクに違和感を感じながらも、観ているうちに、なぜかその見た目に惹かれている自分もいたのが不思議でした。あながち方向性の間違ったメイクでもなかったのかな?笑
『クラウド・アトラス』運命を信じたくなる作品
クラウド・アトラスは、自分と、そして誰かとの運命を信じたくなる作品です。
人生の中で強く惹かれ合うはずの人を、あなたは見逃しているかもしれません。その運命を掴むために、自分の直感を大事に生きてみようと思えます。
実写化不可能と言われた作品ですので、もちろん映画は複雑な解釈を必要としますし、本編は3時間近くあります。
公開当時はあまり人気がなかった映画のようですが、今回SF好きの私が、なぜ今までこのような素晴らしい作品を観ていなかったのか、もっと早く出会いたかったと心から感じた大作でした!
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画像出典:IMDb “Cloud Atlas”
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