『君の名前で僕を呼んで』の感想。北イタリアで織りなすボーイズラブ。滴る少年の愛の季節。

2018年1月16日放送の「たまむすび」で町山さんが紹介の「君の名前で僕を呼んで」。
「モーリス」以降、久しぶりに心に染みたボーイズラブ映画。昨今言われる「LGBT」ではなく、あくまでも、町山さん曰くの「滴る」少年の愛の季節が美しい映画です。そこには罪悪感もタブーもないんです。

 

『君の名前で僕を呼んで』のあらすじ

登場人物

ティモシー・シャラメ= エリオ(主人公17歳の美少年)
アーミー・ハマー  = オリバー(24歳 大学院生)
マイケル・スタールバーグ= Mr.パールマン(エリオの父 大学教授)
アミラ・カサール  = アミラ・カサール(エリオの母 語学堪能)

あらすじ

少年のある一夏の想い出・・・

1983年夏、北イタリアの避暑地。17歳のエリオは家族やガールフレンドとちょっと退屈な夏を過ごしていた。そこへ大学教授の父が招いた24歳の大学院生オリバーがやってくる。自信と知性に溢れたオリバーに苦手意識を抱きつつも、徐々に彼に対し抑えることのできない愛情を感じていくエリオ。 夏の太陽の下で、激しく恋に落ちていく二人。

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『君の名前で僕を呼んで』は、全編「滴る」美しさが満載のボーイズラブ。

町山さん曰く全編「滴る」美しさが満載の映画。

その中心となるエリオ役のティモシー・シャラメ君の美しさたるや!

かの巨匠ヴィスコンティ監督の「ベニスに死す」で美少年を演じたビョルン・アンドレセンを彷彿とさせる美貌の持ち主。

対するアーミー・ハマーは肉体美も持ち合わせた溌溂とした美青年。

二人が並ぶと、まるで古代ローマ彫刻のような趣もあり、中々眼を楽しませてくれます。

『君の名前で僕を呼んで』80年代の北イタリアを堪能。まるで貴族の館で織りなす夏の日々

80年代と言う時代も私たちにはなじみ深くて嬉しいです。ラジオだったり、自転車だったり、ガールフレンドもちょっとダサくて可愛いんですよね。

しかも、考古学の大学教授と言う父親の職業柄か、別荘である館も古い洋館。

イタリア特有のシエスタの時間や親戚たちが集まっての中庭での食事など、古き良きイタリアも感じられる。沢山ある使っていない貴族の部屋で二人が愛を交わすのもロマンがあって、思わずニンマリ・・・。

少年が食べる桃の滴り。エロティックさと神聖さ。

町山さんもおっしゃってましたが、「滴る」と言葉で聴くと、やっぱり淫靡なイメージあるかもしれません。でも、この映画、「滴る」と言う言葉が実にクリーンに感じるんですよね。

例えば、一人で昼寝をしていたエリオが、目が覚めて手にした桃を食べようと見ているうちに、凹んだ部分から夢想を始めます。例えば指をその部分に埋めて行ったり。かなりエロティック。

多分、観た人は必ず印象的なシーンとしてあげると思うんですが、この果実の滴りがなんか、彼の成長の雫みたいで、神聖ささえあったかも。観てはいけないものを見たって感じです。

その「滴る」時間を、実に空気を読まないで割って入ってくるオリバーが笑いながらその桃を食べようとする顔が大人なら、大人にならなくて良いよな~って思わせるシーンです。

『君の名前で僕を呼んで』の原作者のこと。

1987年にイギリスで制作された映画に「モーリス」があります。寄宿学校での少年愛を扱っていて、同性愛映画の金字塔と言われています。

モーリス リストア版(字幕版)

原作が書かれた当時、イギリスでは少年愛が犯罪だったので、「モーリス」の原作者は自分のために書いた作品だと言うことを町山さんが力説してました。(人に見せるための物語ではなかった)

この「君の名前で僕を呼んで」にも原作から同じような感じを受けたそうです。原作者はゲイの経験がないと言っているんですね。では「君の名前で僕を呼んで」とは?

監督であるグァダニーノは、下のように述べています。

「原作の性描写を映像化することに関心はない。二人の世界がどう違うのかを理解してもらいたいわけでもない。私にとっては、唯一原作小説の見事な世界観を表現することが大事なことだ。人が他者との交流を通して美しくなったり、高められたり、輝きを増したりするということがすべてだから。」

息子を肯定する両親。お父さんにも観てほしい映画。

もう一つ心に残ったシーンがあります。男性に恋している息子に対して父親が一言「自分にも経験がある」と言う場面。

ちょっと驚いたのは、これが例えば「年上の女性に恋する」「何人もの女の子に心移りして迷う」等々、青春映画に有りがちな親子の会話だからです。その雰囲気で「お父さんも年上の男性に恋したことがある」と甘酸っぱく告白。

母親も、エリオを黙ってHUGするという寛大さ。美しい息子だからか、知性ある両親だからか、説得力がありました。

多分、今だから受け入れられる演出かもしれませんが、家族の歴史も垣間見えるホームドラマ的要素もあります。ただ観るだけでも十分に美しい映画だし、ご家族と観るのも趣がある映画ではないかと思いました。

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画像出典:IMDb “Call Me by Your Name”

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前川クニコ

前川クニコ

「言葉」で伝える世界に魅了されてライターになりました。リーディング・パフォーマンスもやっています。面白さが伝わる記事を目標に、今日も書いてます。