【ネタバレ】『ブラック・クランズマン』の感想。ラストの衝撃的演出にやられた。でも痛快コメディ!?

今回は、「アメリカ流れ者」で町山智浩さんが2019年2月12日に紹介されていた『ブラック・クランズマン』の感想です。第91回アカデミー賞でも作品賞、監督賞、その他6部門にノミネートされ、惜しくも作品賞は逃しましたが脚色賞を受賞したことでも話題の作品です。

アメリカの白人至上主義団体であるクー・クラックス・クラン、通称KKKを題材にした映画ということで、相当エグい映画なんじゃないかとビビっていましたが見てみるとかなり楽しく見れる作品で安心しました!『マルコムX』などで知られるスパイク・リー監督作品です。

 

『ブラック・クランズマン』あらすじ・出演者情報

あらすじ

黒人新人警官のロン・ストールワースは潜入捜査の一環として軽い気持ちで白人至上主義団体であるクー・クラックス・クラン、通称KKKに白人のフリをして電話をかけます。電話口で非道なレイシストを演じきり、あっさりKKKの入団面接にまでこぎつけてしまいます。黒人であることがバレないように直接団体の集まりに顔を出す際は白人警官であるフリップ・ジマーマンがロンのフリをすることになり、2人で1人の人物を演じるという前代未聞の潜入捜査が始まります。

登場人物

ロン・ストールワース – ジョン・デヴィッド・ワシントン
フリップ・ジマーマン – アダム・ドライバー
パトリス・ダマス – ローラ・ハリアー
デービッド・デューク – トファー・グレイス
クワメ・トゥーレ – コーリー・ホーキンズ

黒人警官ロン役のジョン・デヴィッド・ワシントンはなんとデンゼル・ワシントンの息子!また、同僚フリップ役のアダム・ドライバーは、『スターウォーズ』新3部作のカイロ・レン役。2019年末の完結編が楽しみなところ!さらに、パトリス役のローラ・ハリアーは『スパイダーマン ホームカミング』のリズ役に抜擢された注目の女優です。今後のキャリアにも目が離せませんね。

町山さん解説「ブラックパワー」の時代、KKKに潜入した警官の実話!

町山さんの解説によると1960年代後半ごろから、キング牧師の戦いによって黒人の人権と選挙権が認められ、「黒人であることを誇ろう!」という「ブラックパワー」というムーブメントが起きていたそうです。黒人の登場人物たちがみんなアフロヘアーなのもそういったムーブメントの一環だったそうです。当時の流行なのかな?と思っていましたがそういう意味があったんですね。

また、この映画はなんと実話を元に作られていて、1978年にコロラドの警察の職員だった黒人のロン・ストールワースが実際にKKKの会長、団長であるデービッド・デュークに直接電話をしたそうです。そして本当に潜入捜査をした様子が小説になっています。

よくそんな恐ろしいことを…ただこの映画自体は事実を完全に再現するというのではなくいろんな要素が入ってきているのでそこがまた面白いです。

以降ネタバレ含みます!お気をつけください。

『ブラック・クランズマン』警官を軽蔑する黒人たち。黒人警官ロンの板挟み。

KKKの団体に属する白人たちは当然黒人差別的な発言をしていきますが、彼らだけでなく警察の人間たちもかなり黒人差別的な思想の人物が多いです。黒人を不当に逮捕したり何もしていないのに事情聴取と銘打って嫌がらせをしたりという、黒人の立場がまだまだ確立されていなかった当時の風潮が垣間見えます。

そういう背景から、黒人学生連合の代表であるパトリスは黒人差別撤廃を訴えながらも、警官というものを軽蔑しています。黒人であるから黒人差別撤廃の考えにはもちろんおおむね賛同しているロンですが、パトリスの前では警官ということを隠しているのでかなり複雑な心境に陥っていきます…。

警官は全員差別的な生き物だ」と憎しみを込めて語るパトリスに、全員が全員そうではないはず!と主張するロンですが正体を明かす訳にはいかないのでうまく説得することができずもどかしいシーンです。

差別されたことによって起こってしまった分断を見たような気がしました。
人種差別は人を傷つけるだけでなく、そのことによって人を信頼しなくなっていくということがしっかり描かれているシーンでした。

ただただ黒人万歳という映画ではなく、黒人解放運動の行き過ぎた部分はしっかり指摘してあります。
しかし後半にかけて、警官であり黒人であるというロンのがんばりによってパトリスの心もだんだんと動いていきます!

【ネタバレ】『ブラック・クランズマン』コメディでありサスペンスだけどラストはドキュメンタリー

この映画の一番すごいところはラストシーンなんです。物語としては終わった後のエンドロールの直前の部分に、すごい演出が入っています。

ラストの衝撃的演出!2017年の事件!

なんと、2017年にヴァージニア州で起きた白人至上主義団体とそれに反対する人々が激しく衝突したその実際の映像が差し込まれています。この事件で人混みの中に白人男性が車で突っ込み、白人至上主義者に抗議していた女性が死亡してしまうという事態に発展しました。

この演出はやられたという感じでした。

2017年になっても、全然黒人差別はなくなってないんですよね…!

この話は1970年代のことを描いていますがKKKは解散もしていないし、昔はひどかったのねというのではなくずっとずっと差別は続いているんだということをラストで突きつけてきます。黒人差別は過去のものではないので、まずは現実を見つめてくださいという皮肉が込めてあると思いました。

『グリーンブック』との違い

ここがアカデミー賞作品賞を受賞した『グリーンブック』とは少し違うところです。

『グリーンブック』は人の根っこの善人の部分を信じ、お互いが信頼しあえば人種の壁は超えられるという前向きなメッセージを感じました。

対して『ブラック・クランズマン』は信頼しあうという段階にいたるまでがそもそも難しいからこそ差別は続いているのだというメッセージが感じられます。

もちろんどちらも真理だと思います。いろんな意見がありましたが『グリーンブック』もとてもいい映画なのでぜひ合わせて見てください!

≫ 『グリーンブック』の感想レビューはこちら

『ブラック・クランズマン』不思議なテンポとコロコロ変わる味付けがクセになる!

監督のスパイク・リーはレイシズムと戦うような作品を多く制作しながらも、その作風はただ社会的な記録映画ではなくかなり自由なスタイルです。

本作もシリアスなシーンがあったかと思えば急にコメディになったり、映像が急に切り替わったりと斬新です。

例えば画面が半分に割れていてそれぞれ別の情景が写っていたりと、バラエティ番組のような編集がされている部分もあります。また登場人物たちの話題に出ている映画や音楽のジャケットが画面にデカデカと映し出されたり、まるでコラージュアートを見ているようなカッコよさがあります。

テンポもシーンによって印象が変わります。スピーチのシーンなどはすごく長尺でした。じっくりとスピーチを聞いている参加者一人一人の顔のアップを浮かび上がらせることで、彼らの心情をあぶり出しています。
かと思ったらなんかゆるーい笑いを放り込んできたり、爆笑って感じではないんですけどじわじわ地味なギャグが各所に盛り込まれています。

がっつり笑えるコメディを期待すると、うーん?となるかも知れませんが。笑

『ブラック・クランズマン』トランプ政権のおぞましさを皮肉たっぷりに表現

KKKは白人至上主義団体なので、黒人だけでなくアジア人、ユダヤ人、近年においてはヒスパニックなども差別の対象としています。

白人警官のフリップはユダヤ系なのでそれがバレないように潜入捜査を行います。普段はユダヤ系だという意識があまりなかったフリップですが、過激なレイシズムに晒され自分も差別される人種だったのか、ということを悟ります。

見た目にもわからない部分でも人種差別はあるということですね。

そしてそんなKKKが支持する現アメリカ大統領トランプ氏についても本作はしっかりイジっちゃってます。笑

アレック・ボールドウィンという俳優さんが冒頭とんでもない白人至上主義者として登場するのですが、この人は普段はバラエティ番組などでトランプ大統領のモノマネをしている人なんだそうです。まるでトランプ大統領はこういうとんでもないレイシストだぞ!と言わんばかりのすごい皮肉です。

この冒頭のシーンでバックに流れているのが映画『風と共に去りぬ』のワンシーンなのですが、実はこの映画もアメリカの黒人にとってはかなり憎むべき映画なんだそうです。日本では名作と言われていますが実は奴隷制度を肯定するかのような表現がかなりあるようです。

スパイク・リー監督はアカデミー賞でも、自分の祖母の歴史を語りながら祖先に対する誇りを語り、「2020年の大統領選挙は正しい選択をしよう」と感動的なスピーチを披露したそうです。
アメリカの恥ずべき歴史を今なお否定することなくマイノリティに対して厳しい態度・政策をとりつづける大統領を、痛烈に批判する姿勢がうかがえました。

 

『ブラック・クランズマン』かっこいい黒人文化に触れてスカッとしてみて!

ジェームス・ブラウンや黒人アクション映画のテーマ曲などを織り交ぜながら、黒人文化への熱い敬意を感じるのも魅力です。
社会的なテーマを扱っていますが重たいばかりの作品ではありません。差別に立ち向かうロンとフリップのハラハラのバディムービーであり、人種にぐちぐちこだわって差別してるやつってダサいよね!という痛快な映画なので、ぜひ構えすぎずに見ていただきたいです!

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画像出典: IMDb “BlacKkKlansman”