『グランド ブダペスト ホテル』ネタバレ感想。作家ツヴァイクの悲劇。おしゃれだけど毒入りです。

今回は、「アメリカ流れ者」で町山智浩さんが2014年5月6日に紹介されていた『グランド・ブダペスト・ホテル』の感想です。

ホテルの中で様々なお客さんと関わっていく話なのかと思っていましたが、全然違っていました!笑

かわいい世界観の中で巻き起こる殺人事件、その真犯人とは一体?!

おしゃれ映画が苦手な人にも一蹴しないでぜひ見てほしいストーリーになってます!ウェス・アンダーソン監督作品です。

 

『グランド ブダペスト ホテル』あらすじ・出演者情報

あらすじ

舞台は1932年、ヨーロッパにあるとされる架空の国ズブロフカ。「グランド・ブダペスト・ホテル」は、富裕層たちに愛される名門ホテルです。

コンシェルジュのムッシュ・グスタヴ・H は様々な人物から愛される優秀な支配人で、彼を目当てにホテルを訪れる客も大勢います。一方で、富裕層の老女の常連客何人もの夜のお相手も勤めていました。

ある日、グスタヴは常連客の老女のマダム・Dの訃報を知り、新人ベルボーイのゼロを連れてマダムの屋敷へと向かいます。屋敷ではマダムの遺言状が読み上げられ、そこにはグスタヴにホイトル作の名画「少年と林檎」を遺贈すると書かれていました。

マダム・Dの息子であるドミトリーはグスタヴがマダムと肉体関係にあったことを嫌悪します。グスタヴとゼロはマダム・Dの執事であるセルジュの力を借り、こっそり「少年と林檎」を屋敷から持ち出します。

しかし、ホテルに戻ったグスタヴはマダムの殺人容疑で逮捕されてしまいました。

登場人物

ムッシュ・グスタヴ・H – レイフ・ファインズ
ミスター・ムスタファ – F・マーリー・エイブラハム
セルジュ・X – マチュー・アマルリック
ドミトリー – エイドリアン・ブロディ
ジョプリング – ウィレム・デフォー
コヴァックス – ジェフ・ゴールドブラム
ルートヴィヒ – ハーヴェイ・カイテル
ムッシュ・アイヴァン – ビル・マーレイ
ヘンケルス – エドワード・ノートン
アガサ – シアーシャ・ローナン
マダム・D – ティルダ・スウィントン
作家 – トム・ウィルキンソン
ゼロ – トニー・レヴォロリ

かなり豪華な配役になっています。主演のレイフ・ファインズはイギリス出身の俳優で、『ハリー・ポッターシリーズ』でヴォルデモート役を演じたりもしています!

ウィレム・デフォーやハーヴェイ・カイテルなどなんだかかわいい映画とは無縁に思える人たちも出演していますが、これがまた物語のいいスパイスになっています。

エドワード・ノートンやビル・マーレイはウェス・アンダーソン作品にはよく出ている印象ですね。

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町山さん解説。主人公のモデルはユダヤ人作家シュテファン・ツヴァイク

監督のウェス・アンダーソンは独特の作風を持つ映画監督として世界中から愛され続けています。過去の作品には『ダージリン急行』や『犬ヶ島』、『ファンタスティックMr.FOX』など。

彼の作品は真正面や真横のショットなどが多く、絵本のような美しい画面作りが特徴で、映画としても斬新です。

『犬ヶ島』レビューはこちら

ユダヤ人作家シュテファン・ツヴァイクの影響を受けた本作

本作はオーストリアのユダヤ人作家シュテファン・ツヴァイクの影響を受けた作品です。主人公のコンシェルジュのムッシュ・グスタヴ・H のモデルがこのシュテファン・ツヴァイクです。

町山さんによると、シュテファン・ツヴァイクは1930年代に活躍した作家で、『マリー・アントワネット』などの伝記や歴史小説などを執筆していたそうです。

ラストではシュテファン・ツヴァイクの著作に献辞が捧げられています。

以降ネタバレ含みます。未鑑賞の方お気をつけください!

『グランド ブダペスト ホテル』お菓子のようなかわいい世界観のなかで巻き起こる連続殺人

舞台となるグランド・ブタペスト・ホテルはおとぎ話に出てきそうなピンク色のかわいらしい外観で、内装や衣装なども細かいところまでデザインされていて、どのシーンを切り取ってもオシャレでかわいいです。

しかしただただオシャレな映画ではなく、ちょっとブラックな場面もあってそこがまた楽しい作品です。

マダム・Dの死因は殺人だった。

マダム・Dが老衰や病気でなくなったのではなく誰かに殺されたことが発覚し、犯人に仕立て上げられたグスタヴは刑務所に入れられてしまいます。

次の日にベルボーイのゼロが面会におとずれた時、グスタヴの顔はあざだらけになっていました。

刑務所では初日になよなよしては受刑者になめられてしまうので、自分から喧嘩を売ったという、意外と暴力的な一面も…。

邪魔者を次々と始末する連続殺人・・・

マダムの息子のドミトリーは私立探偵のジョプリングに依頼して、相続に当たって邪魔になる人物を次々と始末させていきます。

ジョプリングは私立探偵というより凶悪な殺し屋だったのです。

遺言執行人の弁護士のコヴァックスや、マダムの執事のセルジュの身内などがジョプリングの手によって次々と殺されていきます。

しかしこの連続殺人もなんだかテンポが良く、殺し方は結構悪趣味だけど少し笑えてしまいます。

殺人だったり刑務所だったりとブラックな題材がかわいい世界観とミスマッチでおかしいですが、そういうブラックな部分も自分の世界観に取り込んでいくウェス・アンダーソン監督はすごいなと感じました。

『グランド ブダペスト ホテル』豪華キャストが勢揃い!俳優のキャラクターを生かしたキャスティングにも注目

有名な俳優がたくさん出ているので、出てくるたびに

あっ、この人!

という宝探しのような感じで楽しいですね。

キャラクターたちの個性が光る作品ですが、それはこの絶妙な配役あってのことで、この俳優じゃないとこの役はつとまらない!と思わせてきます。

ティルダ・スウィントン

マダム・Dを演じるティルダ・スウィントンはすごく綺麗な女優さんで、まだ50代だそうですが、すごくヨボヨボの老女を見事に面白おかしく演じています!

他の作品の中でも結構変わった役を演じていますが、今回もずっとどこか遠くを凝視しているような演技が独特でした。

ウィレム・デフォー

ジョプリングを演じるのは、ウィレム・デフォー

冷徹な殺し屋がぴったりな彼は登場シーンからいきなりゼロの顔面を殴っていました。

ハーヴェイ・カイテル

ハーヴェイ・カイテル演じるルートヴィヒは、グスタヴが刑務所で知り合う受刑者で、すごくいかついんですが危険を冒してグスタヴの脱獄を手伝ってくれる心優しい人物です。

丸坊主でめちゃくちゃタトゥー入っていたりと見た目はすごい怖いですがいい人、というのがまさしくハーヴェイ・カイテルだな、と思いました。

『グランド ブダペスト ホテル』はおもちゃ箱をひっくり返したような映画、だけど・・・

ウェス・アンダーソン監督の他の作品と比べても、かなりエキサイティングな映画です。

次々と場面が変わっていくのでずっと追いかけていられて、とにかく見ていて退屈しないです。

クライマックスは銃撃戦あり、スキージャンプあり、とちょっとアクション要素もあり見応えありです!

町山さんもおっしゃっていましたが、まさにおもちゃ箱をひっくり返したような映画です。

こんなワクワクする楽しい映画なのですが、最後に急にプツン、と少し切ない結末を迎えます。

その辺りが、作家・シュテファン・ツヴァイクの生涯を物語っています。

【結末ネタバレ】クライマックスが物語る、シュテファン・ツヴァイクの悲劇

グスタヴとゼロがはじめに列車に乗った時、ゼロの通行証がなかったため二人は軍に捉えられそうになりますが、軍にグスタヴの知人がいたため助かります。

ラストにもう一度列車のシーンがあり、同じように通行証の有無を確認されますが、ファシストの軍の横暴により通行証が破り捨てられてしまいグスタヴは捕らえられてしまいます。

最後は銃殺され、映画は終わってしまいます。

この悲しい結末はシュテファン・ツヴァイクの結末に重ねられています。

ツヴァイクが活躍していた時代。そして反ユダヤ思想に・・・。

シュテファン・ツヴァイク(Wikipedia)

シュテファン・ツヴァイク
1881年11月28日 – 1942年2月22日
オーストリアのユダヤ系作家・評論家
Wikipedia

町山さんによると、ツヴァイクが活躍していた当時、オーストリアとハンガリーの二つの国が合併していたオーストリア・ハンガリー帝国では、ユダヤ系人種に対する差別をとりやめ、人権や選挙権が与えられるようになりました。

その影響でヨーロッパ中のユダヤ系の人々が集まる国になり、様々な国から才能溢れる人たちが集まるようになりました。

ツヴァイクもそういった差別のない環境で作品を生み出し、ベストセラー作家となりました。

しかし第一次世界大戦が起きてしまい、国がバラバラになってしまい、若者たちは不安に狩られてしまいます。

そんな中でシュテファン・ツヴァイクはもう二度と戦争を起こしてはいけないと、世界中の様々な作家や知識人とコンタクトをとり、世界平和のために尽力します。

しかし、ドイツでナチスが政権をとったことで、オーストリアもナチの反ユダヤの思想に飲み込まれていきます。

ツヴァイクの著作は禁書になったり、手がけた歌劇も上演禁止になったりと絶望的な状況になっていき、最終的に彼は自殺してしまいます。

様々なネットワークを持っていたということで、本作の主人公のグスタヴのモデルになっているのですが、そういった人と人との繋がりすら戦争は奪ってしまうというメッセージを投げかけています。

『グランド ブダペスト ホテル』かわいいだけでは物足りない!オシャレ映画が苦手な人もぜひ

かわいくて楽しい映画なのですが、その裏には平和を願ったにも関わらずその思い虚しく命をたってしまった一人の作家の思いも込められています。

町山さんの解説がなければ全く知らなかったことですが、この事実を知ることでまたひとつこの映画の奥深さと魅力に気づくことができました。
映画の中では小難しいことはあまり語られないので、ぜひ構えずに見てください!

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※情報変更はご容赦ください。

ウェス・アンダーソン監督作品

画像出典:IMDb “The Grand Budapest Hotel”