今回は、現在公開中の新海誠監督最新作『天気の子』の感想、考察を書いていきたいと思います。
新海誠監督の作品はアニメとしてクオリティが異常に高いですよね。ストーリー云々は置いておいても、1900円払って映画館で見て良かったです。その価値は十分ありました。
で、ブログでは、ストーリー云々について書いていきたいと思います・・・。
今回の感想・考察を書くにあたり、影響をうけたくないので宇多丸さんの映画評やネットの評判などはまったく見ないようにしています笑
いろいろ言いますが、結局、浮遊する3分間にやられてます・・・笑
目次
『天気の子』ネタバレあらすじ(起承転結)
『天気の子』ネタバレあらすじをかんたんに起承転結で書いていきます。
「起」
- 高1の帆高は島から家出をして東京にやってくる
- マンガ喫茶に寝泊まりしてバイトを探すもうまく行かない、東京の厳しさ
- フェリーで知り合った加賀を頼り、働かせてもらう
「承」
- 「天気の子」陽菜と、風俗で働くのを助ける感じで知り合う
- 18歳の陽菜は弟とふたり暮らしだった
- 「晴れにする」バイトを考え楽しく3人で暮らす
「転」
- 「晴れにする」能力を使いすぎると陽菜は消えてしまう
- 帆高は拾った拳銃で陽菜を助けていて、その件で警察に追われる
- 穂高、陽菜、弟の3人で逃げる
- 陽菜は消える、帆高は警察に捕まる
「結」
- 帆高は警察から逃げて、陽菜を助ける
- エピローグ(3年後)
【考察】『天気の子』への没入感は「絶望感」を与えられたかでかなり左右されるのでは?
上の「あらすじ」よりももっとざっくりストーリーを言ってしまえば、
「絶望している少年少女が知り合うことで、明るい未来になる」
的な話なんです。
新海誠監督作品を見ていれば、それはだいたい分かることですよね。ボーイミーツガールですね。
なので、その絶望を感じられるかが、良いストーリーだと思えるかの肝だと思いました。
社会からとりこぼされてしまった少年少女を設定したことは、チャレンジングだったかもしれません。
帆高と陽菜、それぞれの絶望
帆高16歳の絶望
- 島でなにか嫌なことがあったらしい
- 家出して東京でマンガ喫茶暮らし
- バイトを探すも足蹴にされる
陽菜15歳の絶望(最後の方で実は15歳だと分かる)
- 母が亡くなり身寄りのなくなり弟とふたり暮らし
- アルバイトを首になり、風俗の仕事をしかける
この設定にアニメというおとぎ話の中で、観客に共感を与えられるのかということですよね。
「かわいそう」に見えるか?と言うと分かりやすいかもしれません。
2人を「かわいそう」に見えるか?
こういう若い子供の孤独・絶望をかわいそうだと思えば、共感というか同情して、観客の心は動かされると思います。
「おしん」とか「母をたずねて三千里」とか「家なき子」とかですよね。
そういうことが出来れば、年齢に関係なく共感されたと思います。
ただ、残念ながら私は『天気の子』の彼らをそうは見えなかったんです。
なにが、足りなかったんでしょうか?こちらは『ヒミズ』と比較して考察してみました。
ターゲット層には共感されたか?スマホ・SNSの存在。
なんとなくですが、新海誠監督はターゲットを中高生~大学生くらいまでに絞っている感じもあります。
15年以上1人暮らし自分には、まったく孤独さが分からなくても、これから東京などの都会に出てくるかもしれない10代とか、現在進行形で1人暮らしをしている大学生には、もうすこしこの孤独は伝わったのかもしれません。
ただ、それでも今の時代には「スマホ」の存在がその設定を邪魔していると感じました。
若い子にとっても、SNSがあるせいで、新海誠監督が学生だったころほどの孤独は感じにくいような気がするんです。
帆高のように島にいようとも、東京に出てくる前にスマホとSNSですでに会ったことはないけど友だちができている可能性があると思うんですよね。
(このあたりは、実際の中高生くらいに聞いてみないと分からないことなのですが)
【考察】『天気の子』に足りなかったもの。比較してしまった『ヒミズ』中学生住田の「絶望感」
身寄りのない子供が、子供だけでがんばって暮らすという設定で『ヒミズ』を思いながら映画を見ていました。
『ヒミズ』は古谷実先生のマンガです(園子温監督の映画は未見です)
『天気の子』の帆高と陽菜は16歳と15歳、ヒミズの主人公住田は15歳の中学生で、年齢も近いです。
ヒミズのあらすじ
- 貸しボート屋を営む住田家
- 蒸発した父親、男と出ていく母親
- ふらりと帰ってきた父親を殺す中学生住田
- 天涯孤独の生活を隠して中学に通う
- 同級生の女の子茶沢さんに状況を感づかれる
- オマケの人生で悪い奴を殺そうと決める住田
- ヤクザからもらった拳銃がある
やっぱり、あらすじを書いてみても、泣けますね『ヒミズ』・・・。
帆高と決定的に違うこと「かわいそう」に見えなかったのは、おそらく「諦め」なんじゃないかと思いました。
帆高が島で何があったかは分かりませんが、まだ自分に価値があると思っていて、
「僕は陽菜と出会ったんだ!」
という希望に満ちた孤独なんですよね。
一方で、中学生の住田は、
「オマケの人生」
です。茶沢さんが心配してさぐりを入れてもずっとかわしていきます。ボーイミーツガールにならないんです。
まあ、住田は人を殺してるんですよね。
帆高くんも、島で人を殺してたら良かったのかな・・・。
人殺してなくてもいいんですけど、2人が出会って救われたのなら、もっとぎりぎりのところで救われるのを見たかったですね。
最近の作品だと、坂元裕二脚本の月9ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」なんかは、東京舞台で現代の若者を設定していながら、うまくこの絶望感を出していたと思いました。
【問題点】『天気の子』の世界観から醒めさせる視点の存在
陽菜は「100%晴れ女」なのですが、つまりファンタジーですよね。
『天気の子』がファンタジーなのは見る前から分かっていることなのですが、これを劇中で醒めさせるようなシーンがあって、なんで入れたんだろうというのがありました。
覚えてるところで3点ほど。
【1】「ラノベみたいなことあるわけないじゃないですか」
※セリフは正確ではないです。
これは、オカルト雑誌「ムー」の記事を担当している事務所で帆高はお手伝いをするのですが、
「100%晴れ女」の企画はどう?
と振られて答えたセリフです。
ここは、最初なので、「振り」とも言えるし、そういうのはあるあるなんですが、新海誠監督作品中では禁句を言ってしまったくらいに違和感がありました。
【2】帆高「彼女が世界の形を変えてしまったんだ」、警察「はい?」
※正確ではないですがこんなやりとり。
警察に捕まった帆高が、だから彼女を探さないといけないみたいに言うんですが、
この現実視点は要るかな?と。
観客もそもそも「はい?」というの分かってて見てるので、なんとかそのアニメ世界の「嘘」に気づかせないようにしてほしかったですね笑
【3】「あの子なに走ってるの?」
終盤で、帆高は陽菜を探すために、線路を走るんですが、そこで東京中の人たちが見ているという視点が差し込まれます。
鉄道整備員さんや、高架下から見てる人々。
世界の形を変えたことに気づいていない世間の人たちと、秘密を知ってる帆高の対比なのかもしれないですが、それを差し込むことで醒めてしまって、ちょっとアニメ見てることが恥ずかしくなってしまいました・・・。
【最高だったところ】『天気の子』の水と浮遊感はすごい!須賀さん良かった。
じゃあ何も感じなかったのかというと、まったくそんなことはなくて、ストーリー的にもアニメの映像でもすごく良かったんです。
それぞれ部分的ですがピックアップします。
ストーリー:上京した帆高に「頼ってくれ」と名刺を渡す須賀
映画の冒頭、明らかに家出ぽい帆高に、フェリーで出会った大人の須賀は、
「何かあったら頼ってくれ」
と名刺を渡します。
これは私の個人的な体験ですが、上京ではなくて、大学生のときにひとり旅で北海道にいったのですが、そのときに移動中に知り合ったお兄さんに、
「行くところなかったらここにいるから」
みたいな感じで連絡先をもらったんですよね。
結局頼らなかったですけど、今思うと、ひとり旅で二十歳くらいの男の子がいたら少し心配されたかなと思いました。
須賀さんの存在はなかなか良かったです。
声はリリーフランキーにしては若いよな?と思っていたら、小栗旬だったんですね。カッコいいわけだ笑
アニメ映像:水の表現がきれいすぎるし、浮遊シーンにはやられました。
アニメでの水の表現はジブリ映画『崖の上のポニョ』のときに、宮崎駿監督が「水の表現は難しくてようやくできた」みたいなことを言っていた印象がすごくあって。
その後、湯浅政明監督の『夜明け告げるルーのうた』『きみと、波にのれたら』でも水の表現があって、そういうブレークスルーがあったのかなと思いました。
そして、今作の新海誠監督『天気の子』の水の表現!
CGもものすごく使ってるんでしょうけど、だとしてもすごいんじゃあないでしょうか?アニメ業界のことは知りませんが、同業者騒然なんじゃないかなと思いながら美しい水を見ていました。
あと、終盤の浮遊感!
もっと長く見ていたかったですね!
もうストーリーとかどうでもいいから、泣きそう・・・ってシーンでした。
(グランドエスケープという曲なんですね。これにすべてやられました・・・)
おわりに – 『天気の子』あの3分間をぜひ映画館で。
というわけで、今回は『天気の子』のストーリー的なとくに「絶望感」という視点で、『ヒミズ』と比較しながら考察してみました。
とは言え、ストーリーは映画の一面にすぎなくて、そういうこと度外視して大好きな映画は私にもたくさんあります。この感想・考察を書いてみて、言いたいことはたくさんあったにも関わらず、最後の浮遊シーンをもう一度見たい自分がいます。「グランドエスケープ」の3分間を、ぜひ映画館で見てみてください。
新海誠監督作品
画像出典:「天気の子」公式サイト
Cody
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