映画『フライト』の感想。この機長飲酒しまくりです。起死回生の方法はあるの!?

今回は、映画評論家の町山智弘さんが2012年10月30日に、TBSラジオ「たまむすび」の中で紹介していた映画『フライト』について語りたいと思います。

飛行機を題材とした映画やドラマは多数ありますが、今回の機長は酒飲みまくりです…お願いだから操縦やめて…

 

映画『フライト』あらすじ・出演者情報

あらすじ

ウィップはその日、機長としてオーランドからアトランタに向けて飛行機の操縦をすることになっていました。前日の夜に、飛行機に同乗するCAのトリーナとセックスや酒を楽しみ、朝は眠気を覚ますためにコカインまで使用して搭乗します。

副操縦士や、同僚のCAであるマーガレットは、ウィップの体調があまりすぐれないことに気が付きますが、機体はアトランタに向けて離陸するのでした。途中、乱気流に巻き込まれながらも、ベテランとしての経験と落ち着きで機体を安定させるウィップ。自動操縦の際に居眠りをしていたところ、衝撃音で目を覚まします。機体がコントロールを失い、急降下していくのでした。

ここでもウィップは冷静に操縦を繰り返し、なんと機体を180度回転させるなどして背面飛行したのち、地上に胴体着陸します。乗客・乗員102名中96名の命を救い、「奇跡のパイロット」として一躍脚光を浴びますが、事故調査委員会による採血検査にて、アルコールが検出されてしまうのでした。ウィップは過失致死罪を免れるべく、弁護士のヒュー・ラングらと共に国家運輸安全委員会の尋問に挑むのですが・・・。

監督・出演者

〈監督〉
ロバート・ゼメキス
〈キャスト〉
ウィップ・ウィトカー:デンゼル・ワシントン
マーガレット・トマソン:タマラ・チュニー
ヒュー・ラング:ドン・チードル

ロバート・ゼメキス監督は、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で監督として名をはせ、最近では2015年の作品である映画「ザ・ウォーク」にてワールドトレードセンターでの綱渡りを行う大道芸人を描くなど、映像面ではCGを多様に駆使する作風で知られています。

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映画『フライト』町山さん解説。筋金入りの悪役「裏デンゼル」とは…

映画評論家の町山智浩さんも、ラジオで映画『フライト』を紹介されていますが、その中で主役の俳優デンゼル・ワシントンについて言及しています。

彼が多くの作品で演じる役柄は、彼の俳優としての転機となった1982年~の医学ドラマ「St.Elsewhere」での医師役や、1999年には映画「ザ・ハリケーン」で冤罪により20年間を獄中で過ごすボクサーの役柄など、誠実で実直なキャラクターが多い印象です。

しかし、町山さんは「裏デンゼルがいる」と語っています。

デンゼル・ワシントンがアカデミー賞主演男優賞を受賞したのは2001年、映画「トレーニング デイ」での汚職刑事役でした。警官であるにも関わらず、麻薬を使用したりディーラーから金を奪ったり…とにかくぶっ飛んだワルを演じて、そのカリスマ性のある悪役演技が高い評価を得ました。

今回の映画『フライト』でも、決して真面目な役柄を演じているわけではないので、「裏デンゼル」に期待しながら観ていただきたいですね。

以下ネタバレを含みますのでご注意を!

映画『フライト』決死の胴体着陸は「アラスカ航空261便墜落事故」が元になっている。

何といっても、急降下する機体をウィップが冷静に操縦するシーンは迫力満点です。こちらのシーンは実際に起こった「アラスカ航空261便墜落事故」が元になっているそうで、映画の中で180度機体を回転させ安定を図るシーンがあったのですが、これも実際の事故で起こった出来事だそうです。

想像すると、耐え難い恐怖と苦痛ですよね…。結局事故では映画のような奇跡は起こらず、乗員乗客全員が死亡してしまったということですが、事実に基づいた映像はよりリアルでした。ウィップが冷静に、副操縦士やCAのマーガレットに指示をして飛行を立て直す様子は、荒ぶる飛行機の中で非常に安心感がありました。冒頭から映画に引き込まれていくシーンです。

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映画『フライト』アルコールと薬物反応、CAマーガレットに嘘の証言を頼むウィップ

事故後、ウィップは自身の体からアルコールと薬物反応が出てしまい、乗客の命を救ったヒーローから殺人者に転落してしまいそうになります。

亡くなった乗員らの葬儀で共に命拾いをしたCAのマーガレットと再会します。互いに生きていることを喜びますが、ウィップはここでマーガレットにあるお願いをします。

それは、事故調査委員会からの質問に対し、事故の起きた日の自分は普段通りであったという、事実と異なる証言をしてほしいとの内容でした。

長い付き合いであるマーガレットとウィップですが、さすがにこのお願いは聞けない、とマーガレットは泣きながら訴えますが、ウィップも自分の運命がかかっているため引き下がることができません。

もう十分でしょう私たち、というマーガレットの一言で話は途切れますが、一瞬2人が見つめあうシーンで、あれこの二人、過去に何かあったのかな…と余計な詮索をしてしまったのは、私だけでしょうか…(笑)にしても、保身のことしか頭にないウィップ、最低ですね。自身の行動も改めず、よくこんな恥ずかしいお願いができたものです。

映画『フライト』誰の中にもあるウィップの弱さ、依存症の恐ろしさ

ウィップは長年パイロットをしてきた経験で、技術も持ち、ある程度の社会的地位を確立し、またパイロットという職業自体も多くの人から羨望のまなざしを向けられる職種であることは間違いないかと思います。

しかし劇中のウィップは、事故後も別れた妻や息子から見舞われることも無く、親しい友人もほとんどいません。

それはウィップがアルコール依存症を克服することができず、自分や周りに嘘をつき続け、人生を正直に歩んでくることができなかったためでした。

依存症とまではいかずとも、誰しもが、自分の弱い部分や、それをなかなか克服できずに安易な選択を続けてしまうといった面があるのではないでしょうか。
そして一度依存症に陥ってしまえば、それを自らの意志で克服するのは限りなく不可能であると言えます。

映画『フライト』ではアルコールをやめようと何度も決意し、自分が破滅しそうになっても飲酒をやめられないウィップの姿に、なぜやめられないのかと疑問に思いながらも、依存症の恐ろしさを学ぶことができる作品にもなっています。

本人が病気を認めたがらないという点も、アルコール依存症の特徴をとらえて描かれていますね。自分の弱さと向き合いながら、隠し事のない人生を歩んでいけたらどんなにいいか…でもそれができないのが人間なんだと考えさせられました。

映画『フライト』ハラハラな展開の中にコメディ要素も!笑いあり感動あり、シリアスもありの航空映画!

予告だけを観ると、法廷で真実を暴くサスペンスなのかという印象を受けてしまう人が多いようですが、真実は冒頭からすでに明らかになっており、主人公ウィップが大量の飲酒を連続する映画です。(笑)
しかし、この事実が明らかになっている状況からどのようにしてウィップが起死回生をはかるのか、シリアスな状況の中でも突然展開される面白シーンなど、航空映画に収まらないストーリーとなっていますので、ぜひご覧になってください!

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ロバート・ゼメキス監督作品

画像出典: IMDb “Flight”

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