『ベル-ある伯爵令嬢の恋』の感想。奴隷制度の時代、1枚の絵で知れ渡った黒人女性ベルの存在。

こんにちは!町山智浩さんが2014年5月13日放送のTBSラジオ「たまむすび」で紹介していた「ベル-ある伯爵令嬢の恋」の感想を書いていきます。

実在した褐色の肌の令嬢の人生を元にした映画です。

 

『ベル-ある伯爵令嬢の恋』のあらすじ・出演者情報

あらすじ

英国海軍士官のリンジー卿は黒人奴隷女性との間に娘ベルをもうけました。しかし、彼はすでに別の女性と結婚した身。ベルの母親は亡くなってしまいますが、リンジー卿はベルとは一緒に暮らせません。彼は、叔父で主席裁判官のマンスフィールド卿にベルの養育を託すことにしました。

肌の色を一見しただけでマンスフィールド卿は一度は断るものの、すでに手元で養育していた姪孫エリザベスの話相手として引き取ることに決めました。
子供のいないマンスフィールド卿は、十分な教育と生活を二人の娘に与え、ふたりは良家の淑女として姉妹のように仲良く育ちます。

しかし、その肌色ゆえ、社交界にデビューする年齢になってもディナーにベルだけは同席を許されないのでした。

ある日、牧師の息子で法律家志望の青年ジョン・ダヴィニェールが、見習い弁護士として屋敷に通うことになりました。彼はベルに、世間で注目を集めているゾング号事件についてに教えてくれます。次第にふたりは心を通わせるようになりますが、身分の壁が立ちはだかるのでした。

出演者:

  • ダイド・エリザベス・ベル(ググ・バサ=ロー)
    本作の主人公。英国海軍士官と黒人奴隷の間に生まれた娘で、首席裁判官の下で教育を受けて伯爵令嬢として育つ。
  • マンスフィールド(トム・ウィルキンソン)
    ベルの育ての父。英国で首席裁判官を務めており、後々の世に残る大きな判決を下す。
  • ジョン・ダヴィニェール(サム・リード)
    法律家志望の青年。
  • エリザベス・マレー(サラ・ガドン)
    ベルと姉妹のようにして育つ。

スタッフ:

監督:アマ・アサンテ
製作:ダミアン・ジョーンズ
脚本:マイサン・サーゲイ

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『ベル-ある伯爵令嬢の恋』町山さんの解説。歴史を知ればもっとこの映画が楽しめる!

この映画で描かれているダイド・エリザベス・ベル
彼女の存在が世に知れ渡ったのは、ある1枚の絵がきっかけでした。

イギリスの名門貴族・マンスフィールド伯爵の館に飾られていた1枚の絵には、明らかに主従関係ではない、白人と黒人の二人の女性が描かれていました。

この黒人女性こそが、マンスフィールド家で娘同然に育てられた伯爵令嬢・ダイド・エリザベス・ベルなのです。

当時のイギリスにおいて、黒人女性が貴族の令嬢として育てられていたことはまさに異例のこと。
また、マンスフィールド伯爵はイギリスの王座裁判所の最高判事の任務についていました。

彼は奴隷制度廃止に一役買ったといわれており、そのきっかけになった事件がゾング号事件です。
これがどういう事件なのか、マンスフィールド伯爵がどのような判断を下すのか、それにベルがどのようにかかわるのか・・・

それがこの映画の大きなキーになっています。

『ベル-ある伯爵令嬢の恋』肌の色?出自?そんなの関係ない!強くたくましいベル

当時のイギリスの貴族界において、女性はなるべく多くの持参金を持ち、少しでもいい男性と結婚することが良しとされていました。

同じ家庭で姉妹のように育ったベルとエリザベスですが、ベルは父親が残したたくさんの持参金を持っているもののその肌の色のためによい結婚志願者が現れず、エリザベスは持参金を持っていないがためにまたよい結婚志願者が現れない状況でした。

しかしベルは、当時の女性としては珍しく、強い意志を持ち、持ち前の聡明さと強さを生かして、自分の人生の選択を自分で行っていくのです。

男性に選ばれるのを待つのではなく、自分の人生は自分で切り開く。
そんなベルのたくましさは、現代の女性の強さにつながるものを感じます。

ベルの存在が知れ渡るきっかけになった、エリザベスと一緒に描かれた肖像画を通しても、彼女の知性や強さを感じることができます。

『ベル-ある伯爵令嬢の恋』ゾング号事件 – 奴隷制度を終わらすのに一役買った女性

世の中を騒がせていた事件が、ゾング号事件

ゾング号は奴隷を輸送する船でしたが、航海中に船内で起こった流行病を食い止めるため、130人以上もの奴隷を、生きたまま海に投げ捨てたのです。

さらにゾング号は、この失った奴隷の損害を保険会社に請求したのです。

つまりこのゾング号事件は、奴隷を海に投げ捨てた殺人事件ではなく、奴隷は人間ではなく「貨物」として保険の支払いを巡る法廷闘争になったという事件なのです。

この裁判を扱っていたのが、他でもないベルの育ての父、マンスフィールド伯爵です。

彼が下した判断にはやはり、黒人奴隷の娘として生まれ、肌の色のために差別を受けているベルの存在が影響しているのは間違いありません。

そして彼の判決が、その後の奴隷制度に関する世論を大きく動かしていくのでした。

≫ 「ゾング号事件」(Wikipedia)

『ベル-ある伯爵令嬢の恋』ベルの恋の行方は?

1枚の絵に隠された二人の女性の数奇な運命と、世界を動かした大きな事件に、手に汗を握りつつ、美しいドレスやのどかな景色のあるイギリスの貴族社会の風景などに癒される映画になっています。

女性が活躍する映画を見たい!という方には自信を持ってお勧めできる一作です。

また、もうひとつ気になるのがベルの恋の行方。ベルに思いを寄せる男性が二人現れますが、ベルはどちらを選ぶのか、にもぜひ注目してみてほしいです。

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※情報変更はご容赦ください。

画像出典:IMDb “Belle”